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第二の試練
第二の試練<55>
「だね。もっと言うと、その『微妙に変わってるとこ』にこそ俺たち庶民は影響受けて――……。悪い言い方すれば、振り回されてる気がするんだよな。やたらと同じが好きで多数派を盲信する国民性のせいで、そこから弾かれた人やそこに馴染めない人が。大体が思考停止とセットだから、埃被ったマジョリティ笠に着て威張り散らしてる奴らって」
「……そうかも。微妙に変わってるくらいなら、気付かない人は気付かないよね……」
彼女は、左の手首に尻尾を巻いては解きを繰り返している。
「感度の差も実際あるだろうけど……。気付かないほうの全員が鈍感なわけじゃなくて、『見て見ぬフリしてる奴』、『昔の風潮を積極的に支持してる、時代遅れで声だけデカい奴』みたいなのがかなりの数いる感じなのがな……」
「……うちのおかあさんもそれかなあ。『結婚しないの?♡』、『早く初孫見せて?♡』ってうるさいんだよね~……。大学生のときにはもう、そういう風に言い出してたと思うんだけど、ありえなくない? 恋愛=結婚の時代も、結婚=妊娠出産の時代もとっくに終わってるのに。……でも、おかあさんにとっては結婚から育児まで全部幸せだったって伝わってくるし、私にも幸せになってほしいって気持ちで言ってくれてるのはわかるの。……もしかしたらおとうさんとの惚気より沢山聞いてきてるかも。『あなたが生まれてくれて幸せ』って」
可憐な唇から、ごく小さなため息が漏れた。
車を停めて、彼女の憂いをすべて奪ってあげたかったけど、後続車もいたので出来なかった。
よりによって、車間距離ほとんど空けずにぴったりくっついてくるタイプのドライバーだったし。
「…………それなら、いっそ『結婚前提で付き合ってる人がいます』って言っちゃえば…………その、なんだ? お母さんの猛攻? ……も落ち着くんじゃない? チャットアプリならさ、報告だけして放置とかも出来るし。写真でも添付すれば、疑われることもないんじゃない?」
「それいいかも! …………喜ぶだろうなあ、おかあさん。おかあさんもすっごく面食いだから。……でも、鏑木くんが口裏合わせてくれてるだけ……って思われる可能性は? ……あ。昔の顔しか知らないはずだから、名前出さなければ大丈夫かな?」
(紗世ちゃんは大学のときのこと覚えてないのか)
俺は一回、酔っ払った彼女を実家に送っていったことがあり、そのときに彼女の母親と紗世ちゃんガチ勢同士、意気投合した。
連絡先も向こうから請われて交換し、今もメッセージやりとりしているくらいには知り合いだし、紗世ちゃんママは俺の気持ちも知っていて、応援してくれていたが――――。
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