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第三の試練
第三の試練<14>
「…………ううん。今の…………千尋くんのお話聞いてたら、私が自意識過剰だったかもって思った。そうだよね。他の人には自慢したいのに、親の前では照れちゃうなんておかしいよね。……でも、この変な臭いが私か千尋くんの趣味だって風に勘違いされちゃうのはやっぱり嫌だから、二人で実家に挨拶行くのはまた別の日にしてもらっていい……?」
隣の白い小猫ちゃんは、申し訳なさそうに縮こまっている。
(可愛いよなあ♡♡ 『帰りはこっち借りてもいい? ほんとにワガママでごめんね……。でも、こっちのほうが千尋くんの匂いするでしょ?』って♡♡)
彼女が白猫のフーディーを羽織ろうとする俺に願ったのは、服の交換だった。
なんでも、ラブホのどぎつ甘臭に対抗するささやかな手段として、1日着込んで俺の臭いが染み付いているであろうフーディーを着せてほしかったらしい。
「あのラブホの臭い、紗世ちゃん相当苦手だったんだね?」
個人的回想を終わらせ、何気ない調子で話し掛ける。
(そこはそんなに臭いしないと思うんだけど♡♡ 紗世ちゃんにはわかるのかなあ♡)
彼女は鼻に袖口を押し当て、ものすごい吸引力を発揮していた。
「うん。本当に苦手。田舎の若いヤンチャなカップルの車みたいじゃない? 完全に偏見だけど、ヤンチャな人の車、こんな感じのすごく臭いエアーフレッシュナー絶対使ってる……」
田舎のヤンキーへの風評被害がすごい。
平成はそんな感じだったけど令和のヤンキーは違うんじゃないのか――と思ったけど、未だに好き好んでヤンキーになってる奴らもある種懐古趣味みたいなもんだし、ヤンキー文化に鑑みるに、自分たちの文脈でだけは伝統重んじてそうだから、アップデートとか俺が考えてるよりされてないのかもしれない。
「……っと、ごめん。まだ返事してなかったな。もちろん今度でいいよ。ご実家への顔見せと挨拶は。というか、俺も今度にしてもらえたほうが助かると思ってた。行きたい気持ちは山々なんだけどさ、紗世ちゃんも言ってる通りいつもの匂いがいいし、一張羅のスーツでびしっと決めたいしね♡♡ 猫耳付きのフーディー着てる男になんか、大事な娘さん任せられないだろうし」
交換した黒猫のフーディーは、甘く芳しい香りをほんのり纏っていた。いつも彼女から漂ってくる香りだ。
他の女の子からは香害レベルの香水の臭いしか感じたことがないのに、香りものを変えても変わらない彼女の匂いというのが確実に存在していて、俺はその香りに包まれるといたく安心するのだった。
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