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第三の試練
第三の試練<27>
「紗世ちゃんの彼、愛を言葉にもしてくれるのね~♡♡ 物質だけじゃなくて♡」
黒豆が沢山入ったおかき片手に、おかあさんはしみじみと呟いた。
「…………行動にしてくれてる話は確かにしたけど、物質にしてくれてる話ももうしたっけ? 最近付き合ったばっかなのに、相当な額投資してもらってるんだよね。稼いでるっぽいのは知ってたけど、それを他の人に遣えるかどうかはまた別の話だよね」
黒豆は最近目にする機会が増えた食材のひとつだった。彼が炊いてくれる雑穀米にもよく入っているから。
(あれだけ健康に気を遣ってる感じの人が、冷蔵庫と冷凍庫に身体に悪そうなものばっかり詰めてくれてるのって、すごいことだよね。……愛だよね)
「それはあれよ~♡ ……ええっとねえ……『誰とでも付き合えるけど、誰のことも本気で好きじゃなかったし、心許してない』って感じの紗世ちゃんが褒めちぎるくらいだから、きっと時間だけじゃなくてお金も惜しみなく遣ってくれてると思ったのよ♡♡ 紗世ちゃんのイケメン今彼は♡」
「なる……ほど…………?」
おかきを振り回して言い訳するおかあさんは、挙動不審にも程があった。
(おかあさんの勘のよさは知ってるけど、流石に当たりすぎ。霊視出来るタイプの占い師レベル。……怪しい。やっぱり私立探偵雇って、私のこと嗅ぎ回ってたんじゃないの? ……まあ、何年も帰ってなかった私が悪いんだけど、そこまでするかなあ!? 大事な一人娘が心配だったのはわかるけど、探偵はやりすぎでしょ! プライバシーの侵害だよ!)
「紗世ちゃんのお話聞いてる感じ、今彼以上の男はいないわよ♡ だから絶対離さないようにね♡ どんな手を使ってでも離しちゃダメよ♡♡ 紗世ちゃんならわかるわよね?♡」
「…………『どんな手を使ってでも』、っていうのは?」
「やだもう~♡ 紗世ちゃんならわかるでしょ~?♡♡ 紗世ちゃんの持ってる全部を使うのよ♡ 出し惜しみなんてしちゃダメよ♡ いいもの持ってるんだから♡」
「使わなくても大丈夫そうな場合は?」
――と尋ねたのと同じ頃だっただろうか。
(…………今の音は?)
2階の私の部屋のあたりから、人の足音らしき物音がしたのは。
「ねえ、おかあさん。……今日って、おとうさんいないんだよね?」
「おとうさんはいないわよ~? いたら、ここにいるはずでしょう?」
「だよね。……今、2階から人の足音っぽい音が聞こえたんだけど……」
「気のせいじゃないかしら~?」
(なにを隠してるの?)
音のした方向に視線を遣ったおかあさんが嘘を吐いているのは、ほとんど確定したようなものだ。
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