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仮初恋人遊戯
仮初恋人遊戯<3>
「ん? ……ああ! そういえば、俺着てるの十二支シリーズのマウスモデルだったな」
脇腹の感覚に意識を向けまいとして、語尾が若干素っ気なくなった。
「ねずみさんってグレーのイメージだけど、シルバーなんだね」
彼女は特に気にしていないのか、はたまた気付いていないのか、にこやかに会話を続けている。
「ねずみらしからぬ煌びやかさかもね。まあ、『yours』は基本、攻めたデザインと色使いが売りだから」
「そっかあ♡」
「ちなみに十二支シリーズのタイガーモデルはゴールドだよ。ちゃんと縞模様も入ってるの。あれもキラキラしてて好きだな」
ねずみは好きでも嫌いでもないけど、生地に細かいラメが入ってキラキラしているところがお気に入りの一着に興味を持ってもらえたことに嬉しくなって、特に聞かれていないことまで答えてしまう。
「ゴールドのタイガーストライプ……♡ 今度、着てるとこ見せてもらえる?♡ トラさんな鏑木くんも、きっとすっごくかっこいいと思うの……♡♡」
うっとり見つめてくる聞き上手で乗せ上手な彼女の鼻筋にも、唇で愛を伝える。
元カノが見てもいないうちから悪趣味と切り捨てたそれを、君はそんな風に言ってくれるんだね。
「もちろんだよ♡ 明日それにしてもいいし♡ ていうか、二日連続で俺のリクエストコーデみたいな感じだし、明日は紗世ちゃんに俺の服も決めてもらおうかな?♡♡」
「楽しそう♡♡ だけど、鏑木くんはお洋服たくさん持ってると思うから、候補は絞っておいてね?♡」
「そうする♡ タイガーモデルの他は何がいいかな……。まだあんまり着てないのもいいし、最近好きでよく着てるやつでもいいな……」
キスを中断し、半分以上、自分の世界に意識を向けていたにもかかわらず、彼女は黙ってにこにこ俺の様子を見ていた。
「♪」
――――はずなんだけど。
リップ音つきの可愛いキスで思考を中断させられたのは、候補がほとんど決まりかけたときだった。さっきも思ったけど、可愛い音出すの上手いな。
「ねえ、紗世ちゃん?♡ 今、どうして突然ちゅーしてきたの?♡♡」
飼い主の注目が自分に集まってないと不満で、あの手この手で気を引こうとする猫ちゃんみたい。
キーボードに乗ってきたり、前足でてしてししてきたりするんでしょ?
「『好きなもののお話してるときの鏑木くん、可愛いなあ』って思ったら、しちゃってた……♡ ごめんね、急に……」
理由を語った唇は、物欲しそうに色付いていた。
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