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仮初恋人遊戯
仮初恋人遊戯<44>
しおりを挟む「…………あ、やっぱ握手するとこだった? ごめんね、気が利かなくて」
繋いだばかりの手を離しそうとしたら、彼女の手が追い縋るように俺の手をがちっと掴んだ。意外と握力あるなあ。
「ううん。手繋ぎたかったから、それでいいの。握手もいいけど、横並んでるときだとしづらいし。……でもね? もっとこう……♡ なんていうか、ちょっとびっくりしたくらいじゃ離れないような繋ぎ方がいいなあ……って思っちゃっただけ♡♡」
「そっかそっか♡♡ じゃあ、紗世ちゃんのリクエスト通りの恋人繋ぎしよっか♡♡」
「いちいち言わなくていいのに♡ ……でも、嬉しい♡ ありがとね、鏑木くん♡」
俺が繋ぎ直すまでもなく、彼女は巧みに手を繋ぎ変え、身体を擦り付けてきた。連続で繰り出された猫ちゃんっぽい仕草のせいで、ときめきがとどまるところを知らない。
「ねえ、私からも訊いていい? 鏑木くんは私と逆で、ゾンビOKなのにお化けがだめなのはどうして?」
「……ああ、それなんだけどさ。なにもお化け全般NGですってわけじゃなくて。西洋風のお化けならまだいいんだよ。陽気なイメージじゃない? 夜な夜な舞踏会開いて盛り上がってそうだし、あんまり怖くなさそうでしょ」
「え!? そうかな? 地域性とかも込みで考えても、そんなパリピばっかってこともないんじゃない? ……ていうか、生前そういう感じだった人って、あんまり化けて出てこなそうな気するけどなあ。パーティーも天国で開いてるんじゃないかと思うけど……」
繋いだ手をブランコみたいに大きくぶんぶん振っているのは、ご機嫌な証拠だと思っていいのかな。
「そうかな? まあ、それはいいんだけどさ。日本の幽霊って、じめじめしてて怨念強そうじゃない?」
「じめじめ……してるのは、人っていうか気候のほうじゃない? ……だけど、そういうのも多少は性格にも影響するのかなあ。……してそうかも……。しかも、考えてみたら和装のお化けってなんか怖い…………!」
俺の手をぎゅうっと握ってきたのは、和装のお化けを思い浮かべて怖くなっちゃったからだろうね。
「でしょ? 俺の言いたいこと、わかってくれた?」
「うん……。丑の刻参りスタイルの女の人とか絶対怖いもんね。あと落武者も」
お化け談義に花を咲かせてる場合じゃないのかもしれないけど、吊り橋効果の偽物のドキドキなんかよりずっと距離が縮まってるんじゃないかと思う。
描いてたシナリオとは違うけど、思い切って誘ってみてよかった。
――――そういえば、さっきから全然脅かし役に会ってないけど、ここも人手不足かな?
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