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仮初恋人遊戯
仮初恋人遊戯<46>
しおりを挟む「うわ~……。確かにどっちも怖いな……。夜中に目が覚めて鎧武者が俺の顔覗き込んでたら、寝不足決定だもん……。ていうか、ほんとにそんなことあったら、紗世ちゃんに連絡しちゃうかも!」
暗い廊下の真ん中を肩を寄せ合って歩きながら、冗談めかして言ってみたら――――。
「していいよ? 鏑木くんだったら電話で叩き起こしてくれていいし、泊まりに来てもらっても大丈夫♡♡ いざとなったら、私のこと頼ってほしいな!」
彼女はどんと胸を叩いた。
ついでに言うと、きらきらした瞳の奥には使命感がめらめら燃えていた。そんな彼女の頼もしさ満点の回答に感心してたはずなんだけど――――。
「……それもそれで寝不足にしちゃうかもしれないけど……♡」
回答には、どうやら続きがあったらしい。そういうことね♡♡
「…………気持ちは本当にありがたいんだけど、『エッチなこと考えてたらお化けが寄ってこないのは本当か』みたいな実験に、俺のこと巻き込もうとしてない?」
「えへへ♡ わかっちゃった?♡」
わざと呆れた風な目をしてつついてみると、彼女は舌を出してあっさり白状した。いや、潔いな。あと、その顔、他の男の前で絶対しないでほしい。みんな君のこと好きになっちゃうから。
「バレバレ♡♡ 何年の付き合いだと思ってるのさ♡」
「何年かなあ? 忘れちゃいそうになるけど、私たちって幼馴染だったね?」
彼女は指を使って計算し始めた。
――――そう。俺たちの付き合いはなかなかに長い。ずっと一緒ってわけじゃないけど、合計したら片手じゃ絶対に足りないくらいの年数、いいお友達として付き合っている。
「そうだよ?♡ しかも、ただの幼馴染よりずっと運命的かも……♡ なんて、俺は思ってるんだけど♡♡」
俺と紗世ちゃんの出会いは一、二歳のときだったはずだけど、初対面の記憶はさすがにない。
小さい頃はご近所さんで、お互い好きなものが周囲とずれてたこともあって、その頃もよくふたりだけで遊んでたなあ。
でも、小学校低学年のときに俺が引っ越してそれっきり……かと思いきや、大学の構内で再会を果たして、『これはもう運命だ』と身体にビビビッと電流が走った。あの日のことは一生忘れないと思う。
「言えてる! また会えるなんて思ってなかったけど、いまがいちばん楽しいと思えるのは鏑木くんのおかげ!」
再会してからはわりと頻繁に会ってるし、彼女が真っ先に頼ってくるのはどんなにデリケートな問題だろうと俺。子どものとき以上に仲良くなれてる手応えだってある。本人だってこう言ってるし。
「……ありがとう。嬉しいよ」
他の友達には彼女のことをちゃっかり『親友以上恋人未満(信頼できる男友達には、それに加えて未来の奥さん)』として紹介してるくらい。
こんなのもうとっくに恋始まっててもおかしくないと思わない?
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