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“mellow time”~いつか夢で~
“mellow time”~いつか夢で~<24>
しおりを挟む「日が暮れるくらいには、せめてお酒楽しめる程度にはお腹に空いてるといいね」
「…………ね、鏑木くん?」
「ん?♡ 先週のお酒だったら、まだ残ってるよ?♡ 『飲みたい』って言って飲めてなかったの、試してみたらいいんじゃないかな♡♡」
彼は本当に優しいと思う。『鏑木くん』呼びに戻っても、嬉しそうに返事をしてくれるのだから。
「ありがと♡ 私が飲みすぎないように監視してもらっていい?」
「なんで?♡♡ 俺の他に誰もいないんだし、飲みすぎちゃってもいいじゃん♡♡ 面倒見させてよ♡」
羽目を外せる条件はすべて揃っている。しかし――――。
「鏑木くんしかいないのは安心だし、すごく頼りにはしてるよ? だけど、また記憶なくしちゃうのやだもん…………」
「……そっか。そうだよね。考えなしだった。ごめん。俺も忘れてほしくないなぁ。今日だって、まだご飯食べてきただけなのに楽しいし……」
鏑木くんは唇を嚙み締めた。その仕草に込められた感情がわからない。
「…………さっきのチョコの話なんだけどさ」
「うん?」
「『代替品なんてあるはずない』っていうの、同感だな。紗世ちゃんの代わりなんて、誰にも出来ないもん……」
「鏑木くん…………?」
ひどく傷付いているかのような自虐的な笑みを浮かべた彼を抱き締めたい衝動に襲われたけれど、今は運転中だ。集中力を乱すわけにはいかない。
「急に変なこと言ってごめんね? さあ、今日はこのあと何しよっか♡♡ ラブラブな二日間にしようね♡♡」
一発で駐車した彼は、シートベルトを外して言う。その姿は普段と変わりなく見えた。
靴を脱ぎ、隣に彼の靴が並べられたことに感動している中、通されたのは先週の土曜日に目覚めた部屋だった。
(ベッドはあるし、ここで寝てるのは確かなんだろうけど、ベッドルームってより第二のリビングとかリラックスルーム? みたいな位置付けの部屋なのかも……)
しかし、現時点での最大の関心事といえば、もちろん――――。
「……お腹、苦しくない?」
両手を胃の上に乗せ、彼に尋ねた。
「結構苦しいね。横になっちゃう?」
彼も片手を自身の胃の上に当てた。
「なりたいけど、太らないかな?」
「『食後すぐ』は過ぎたと思うし、そこまで神経質にならなくても大丈夫なんじゃない?」
「うーん……。どうなんだろ? いつからいつまでが『食後すぐ』……?」
「…………よっ、と」
立ったまま考えていると、掛け声を発した鏑木くんが正面から私を抱き上げた。
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