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“mellow time”~いつか夢で~
“mellow time”~いつか夢で~<26>
しおりを挟む「鏑木くん? どうしたの?♡」
その顔を覗き込んだら、彼は普段のにこやかな表情に戻った。
「ええと……。なんでも…………なくはないか。ごろごろしてるだけっていうのも、ちょっと退屈かなあって」
「退屈?」
ずりずり音を立てながら私に近付く彼に問い掛けた。
「……あ、なんか嫌な言い方しちゃった気がする。ごめん! 紗世ちゃんと一緒にいるんだもん。全然退屈じゃないよ。退屈じゃないんだけど、なんか落ち着かない感じ? 手持ち無沙汰……って言えばいいのかな?」
言葉を選んで訂正してはいるけれど、ぽろっとこぼれた『退屈』のワードも彼の本心なのだろう。
(鏑木くん、時間の使い方上手そうだもんね。常にマルチタスクが当然で……。この時間だって、少しでも有意義なものにしたいと思ってるのかも)
思い上がった解釈をするなら、『私とこうしていること』に対してではなく『横になって消化を待つだけの時間』に対しての感想だ。
「…………『退屈』、というか……。私の場合はドキドキしちゃって『大変』、かも……?♡♡」
彼は物差し一本分の距離があるかないかのところまで近付いてきていた。
「可愛いこと言ってくれるじゃん♡♡」
「だって、好きなひとの近くにいるだけでもドキドキして胸がきゅーって苦しくなるのに、こんな明るいうちからベッドで横になってるんだよ?♡♡ 鏑木くんはドキドキしないの?♡♡」
胸の上で両手を重ねたら、心臓が返事をするように大きく鼓動した。
「してるよ?♡ 『いつ紗世ちゃんのこと素っ裸にしようかな♡♡』みたいなことも考えてる♡ 明るければ、お顔もカラダもよく見えるよね……♡ 下着姿でポーズ取ってもらうのもいいかも♡♡」
「…………下着姿で取るようなポーズっていうと…………♡」
お腹の中に収められたご馳走たちが空気を読んでくれて、少しだけ楽になった――――ので、横向きの姿勢からうつ伏せになった。
「たとえば、こういう?♡♡」
胸をベッドにべたっとつけたまま、お尻だけを高く上げ、最後の仕上げに誘惑されてほしいひとに顔を向けた。
通称・女豹のポーズ――――だったと思う。実際の女豹がどのような表情で雄を誘うかは知らないけれど、頑張って切ない顔を作ったつもりだ。
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