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●REC
●REC<45>
しおりを挟む「鏑木くんは私に嫌ってほしいの? ……嫌われたいまでは行かないのかな。憤慨したり詰ったりしてほしかった? そのほうが――……罪悪感が薄れて、鏑木くんも楽になれる?」
彼がしてきた質問の真意を測りかねて尋ねたはいいけれど、直截的になりすぎたかもしれない。
「…………紗世ちゃん。もし俺のために怒ろうとしてるんだったら本当にやめてね? 心の底から軽蔑したうえでだったら、どんなこと言われても受け止めるけど。嫌われて――……見損なわれて当然のことをしたのは、俺自身がいちばんよくわかってるから」
「……わかった。――けど、鏑木くん。私、最初の質問の答え聞いてないよ? 答えてくれない? 答えたくない……かな?」
「紗世ちゃんに嫌われるのなんて、絶対嫌だよ。もしかしたら、死ぬより怖いと思ってるかもしれない。そのくらい嫌…………」
弱り切った声を出すわりに身体を離そうとした彼に苛立って、私の中の何かがぷつんと切れた。
こんなに好きにさせたくせに、今更身を引こうだなんてあまりに自分勝手だ。こうなったらとことんまで責任を取るのが筋を通すということではないのか。
「……じゃあ、黙ってればよかったんじゃない? そしたら、少なくともそれが原因で幻滅されたかもなんて心配しなくて済んだでしょ。……なのに、どうしてこんな映像観せてきたの? 話すだけだったら、鏑木くんに都合の悪い部分全部伏せておけたじゃん……!!」
言葉を選ぶことが出来なかったのは、心に余裕がなかったからというだけではない。
(『遠慮のない関係』って一見いいことみたいだけど、片方だけが相手に遠慮してない関係性なんて一方的な搾取でしかないよ……。友達なのにちっとも対等じゃない……。もちろん他の関係でもそうだけど)
なるべく柔らかい言葉をと思っても咄嗟に出てこなくて、整える前の刃を突き立ててしまうのは、私自身がいかに彼を思いやってくることができなかったかを示す証左でもあった。
「まあ、確かに都合の悪い部分はあったね。あったというか――――最初から最後まで、全編にわたってお蔵入りさせておくべきものだったんじゃないかって、今になって思い始めてる」
しかし、彼は淡々と返事をするだけ。こんなときでも、相手の打ちやすいコースを見極めて打ち返す職人技じみたトークセンスが光っている。
『心が氷漬けになってしまったかのようで恐ろしい』なんて、彼の心を凍てつかせた張本人の言えたことではないけれど、そう感じてしまったのも事実だ。
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