yours-夢の罪過-

●REC

●REC＜56＞

「寝込み襲われちゃってるのに？♡♡」　

　スマートフォンを静かに置いた彼は、左の頬をびよーんと伸ばしてきた。つまむことが出来てしまうほどの頬肉を悔しく思う反面、彼に触ってもらえるのは悪くないと思ったりもして。

「流されやすすぎて心配になっちゃうなあ♡♡ でも、これからも俺と一緒にいればなんにも気にしないで飲めるから、そこまで支障はないと思うよ♡ よかったね♡♡ 酔っちゃっていいし、しっかり面倒見てあげる♡♡ 寝ても戻しちゃっても気にすることないから♡ こんな男、滅多にいないと思うなあ♡♡」

「……だけど、それじゃずっと鏑木くんと一緒にいるしかなくなっちゃわない？♡♡」

　自画自賛する彼の左胸に耳を当てたら、鼓動が伝わってきた。

「そうだよ？♡ 紗世ちゃんはずっと俺とだけいればいいの♡ 俺ひとりで紗世ちゃんが必要としてる全部になれる自信あるよ。他の人なんて必要ある？♡♡」

　髪を撫でていた手が顎に添えられた。肉を押し、くっ、と持ち上げる仕草は愛されている自信に満ちていた。

「…………そこまで言うなら、鏑木くんが『ずっと一緒にいたいと思える男かどうか』、試させてくれる……？♡♡」

　思いが通じてからの彼は余裕綽々に見えるけれど、先・に・惚・れ・て・い・た・の・も・愛・が・よ・り・重・い・の・も・彼・のはず。――選・ん・だ・の・は・私・だということを思い出してもらうにはちょうどいいタイミングではないか。

「ああ♡♡ この前、デートで紗世ちゃんの彼氏適性調べたときみたいに、今度はエッチのお手並み拝見って感じ？♡♡ カラダの相性、大事だもんね♡♡」

　待っていましたと言わんばかりの即答だ。

「そう……♡ 鏑木くんだって起きてる私とはまだ未経験のしてないはずだし、『今度は二人とも起きてる状態でしよう♡』ってさっき言ってくれてたし――♡♡」

　ずりずり這うように身体を動かして唇を合わせた。

「「しない理由ない（か/よね）♡♡」」

　微笑み合ったあと、声に乗せた言葉までもが重なって、先ほどよりも大きく笑みを広げる。

「ハモっちゃったね♡♡」

「こういうこと、前から結構なかった？♡」

「付き合う前から？♡ 言われてみればあった気するな♡♡」

　お酒を飲んでも浮腫みにくい体質だと話していた気もする。顔全体もそうだし、瞼だって――――。