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恋人遊戯
恋人遊戯<85>
しおりを挟む「綺麗にメイクするだけでも時間かかるのに、俺のためにそこまでしてきてくれたの?♡♡ 紗世ちゃんの気持ちはめちゃくちゃ嬉しいけど、俺としては余す所なく堪能したかったなあ♡ 吹き残しのアンモニア臭とか昨日の晩にお風呂入ったっきりで蒸れ蒸れの熟成された味とか♡♡」
先週の彼女は、居酒屋で長いこと(他の友達がいたから長く感じただけで、一時間くらいだったかもしれない)座っていたせいか、股間周りは特に汗のにおいが強かったし、愛液も今日よりしょっぱかった。
(木の椅子って長時間座るのに不向きだよな。腰への負担といい、通気性の悪さといい――――。そのおかげで俺は紗世ちゃんの味が知れたから、感謝以外の何物でもないけど♡♡)
「!?♡」
彼女は赤裸々に語った俺の顔を二度見した。何か言いたそうにも見えるけど、何をどう言えばいいかはかりかねてる感じだ。
(次の日のショッピングデートとその次の日のデートも行き先が海の近くで、風に乗って潮の香りがするたびに紗世ちゃんの味思い出してた――ってことは内緒にしとこう♡♡ すでにキャパオーバーって感じでぷるぷる震えちゃってるし♡)
「ち――……! 千尋くんのド変態♡♡ 狂人♡♡ サディスト♡♡」
今度はさすがに枕が飛んできた。不安定な体勢とは思えないコントロールのよさ。彼女の放った枕は俺の左頬に直撃したけど、少しも痛くなかった。
「そんなので貶してるつもり?♡ ノーダメージだけど?♡ 自覚あるし♡ ちなみに枕のほうもノーダメ♡♡」
でも、枕がぶつかる瞬間に俺が目を瞑ってしまったせいか、彼女はおろおろとこちらを気にしている。
(自分で投げたくせに♡♡ あとで心配になるくらいなら、最初からバイオレンスなことしなきゃいいのにね♡♡)
「開き直っちゃって……!♡♡ 直す気ないの?♡」
それを聞いた彼女は素早く調子を取り戻してぷんすかし始めたけど、その前にほっとした表情をしたのも知っている。
「一生少しもないなあ♡♡」
「顔と声とスタイルがめちゃめちゃよくて、仕事も出来てお料理も得意で――――。ていうか、版画以外のことはひと通り出来ちゃうからってそういうのよくないんじゃない?♡♡ 性格は――おいといて、その歪んじゃってる性癖に付き合える女の子なんてあんまりいないと思うなあ!!!」
息継ぎなしで捲し立てた彼女は、肩を上下させている。頬にも赤みが差して事後みたいだ。
「紗世ちゃんがいるじゃん♡♡」
「…………え?♡」
間髪入れずに言ったら、彼女はまばたきをして涙の載った睫毛を揺らした。
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