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恋人遊戯
恋人遊戯<99>
しおりを挟む「…………違う。謝らないといけないのは俺のほうだ。ごめん、紗世ちゃん。……全然軽々しくなんてなかった。覚悟決めて言ってくれてたんだね。『千尋くんの全部を知って、好きになりたい』って……。なのに、俺は――……」
俺は俺の嫌うタイプの人間を同じことをしていた。いちばん近くにいたくせに、自分自身が作り出した彼女像しか見ようとしていなかった。
「ううん、ううん…………!! 千尋くんはなんにも悪くないよお……。千尋くんのことすごい人だって盲目的に信じてて、素を出しづらくしちゃってたのは私だもん。……ごめんね。ごめんなさい……」
泣きじゃくる彼女に覆い被さって抱き締めた。華奢なことは知っていたけど、ここまで頼りない印象をおぼえたのは今が初めてだ。俺は彼女がこの細い肩を震わす必要のないように、大事に大事にしてあげないといけない。
(俺だって同罪だよ。紗世ちゃんのこと女神様みたいに崇めてさ――――。それを犯すってのも我ながら訳わかんないけど)
「どんなに神様みたいでも、神様じゃないもんね……。千尋くんは人間だもんね…………」
「…………おっしゃる通り。万能だけど全能じゃないし、好きなコに限って振り向いてくれなかったし? 神様だとしたら残念すぎ。俺は普通よりちょっとだけ格好良くて器用な人間。紗世ちゃんのことが死ぬほど好きなただの男。……紗世ちゃんが俺のこと神格化しちゃってたのはさ、俺が紗世ちゃんの話聞くばっかで俺自身の話してなかったせいでもあると思うし、気にしないでよ。わかんない部分は想像とか妄想で補うしかない――だろ?♡♡」
「許してくれるの? 私のこと――……」
宝石みたいな涙をぽろぽろ零して、彼女が問うた。
「許してないこともあるけど、紗世ちゃんが謝ってたことに関しては別に怒ってもないから。頼られて嬉しくて、居心地のいい関係に甘んじてたのは俺も同じだしね。…………俺と友達以上になったこと、紗世ちゃんは後悔してない?」
「しないよ。絶対したくない。……そのためにも、やっぱり知りたい……。友達のままだったら絶対見せてもらえなかった、千尋くんの色んな表情……♡」
背中に腕を回した彼女は、複数の意味でいやらしいカラダを押し付けてきた。真面目な話してるのに発情しちゃった?♡♡
「紗世ちゃんはさ、怖くないの? 俺のこともそうだし、全部知ることも。その全部の中にはさ、紗世ちゃんにとって都合の悪いことも含まれてるかもしれないじゃん。多かれ少なかれ」
「怖いよ、すごく。……でも、千尋くんがもし一人で抱えきれないものを持ってたら、それを知らないでいるほうがずっと怖いし、悲しいから。私に教えて、千尋くんの全部……♡ 私にぶつけて気が済むなら、ぶつけてほしいの♡ 頑張って受け止めるから♡♡」
裾から忍び込んできた手が、気を抜いていた腰と背中を這い回る。格好悪いのを承知でスラックスを少しだけ下ろして、ソレを捩じ込んでしまいたい。
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