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恋人遊戯
恋人遊戯<126>
しおりを挟む「…………前から思ってたんだけど。紗世ちゃんさ、セフレ選びはもっと慎重にすべきだったんじゃないかな。あと俺、巨人とかじゃなくて普通サイズの人間だから、たぶん両手足の爪の垢搔き集めても数人分にしかならないと思うな。……いや、一人分でギリか……? というか、爪から垢なんて出てるのかな。成分的にも蛋白質の一種じゃなかったっけ? いやでも、爪自体は硬い角質だから理論上は出るのか……?」
眠気を飛ばすために口を動かすつもりが、途中から真剣に考え始めてしまった。目は覚めたからいいけど、こんなに気になるのに今すぐには調べられなくてもどかしい。
「真面目だね!?」
俺の顔と手元を交互に見ていた彼女の視線が、顔でストップした。
「大真面目だよ、俺は。いつでもね」
「……うん。真面目な性格だし、普通サイズの人間だね。鏑木くんは。でも、下半身は普通じゃない……ていうか、正直めちゃめちゃ立派だから自信持って?♡♡」
小さな手が避妊具の上からまだ膣内に入れてもらってない部分を撫でさすってきた。体温が伝わりやすいという明確なアピールポイントのある製品を使用しているため、じんわりと優しいぬくもりを感じる。
(さっきからやけに触ってくるけど、外そうとしてるわけじゃないよな? 触ってもらえるのは嬉しいけど、勃ちすぎて痛いというか苦しいというか。率直に言って、早くしたいんだけど…………)
「あ……♡ 千尋くん、またおっきくなった?♡♡」
息と声を弾ませた彼女は、俺といるときによくする顔をした。ほんの少しだけ文学的な表現に直すと、満面の笑みってやつだ。
せっかく装着した避妊具を外そうとしているというのは考えすぎで、早く奥まで欲しいだけかもしれない。彼女の台詞が成長期の甥または姪に会った親戚さながらに聞こえる――なんてのも完全に雑念だ。
「なったけど、茶化すなよ。今、そういう場面じゃなかっただろ」
『悪戯っ子な子猫ちゃんは躾し直す必要がありそうだね?♡♡』とでも言っておけばドチャクソエロい展開に持っていけただろうに、俺にはそういう絶好の機会をふいにする才能があるのかもしれない。 ただの照れ隠しだって伝わってたらいいけど。
「……ごめん」
しかし、言ってもいないことが伝わるなんて上手い話はなく、彼女はしゅんとして俺のモノから指を外した。『笑顔を守りたい』とか嘯いてたくせに早速笑顔奪うとか、彼氏失格じゃん。
「わかってくれればいいよ。紗世ちゃんも俺を見習って、もうちょっと真面目に生きたら?」
彼女は心の底から反省しているかもしれないのに、憎まれ口が止まらない。普段から容赦なく他人に毒舌を浴びせてきた応報か。
「…………そうだね。鏑木くんは昔から真面目だもんね。知ってるよ。だから、私の身体のことも心配してくれて、怒ってくれてるんだよね」
細い腕が少し丸まった背中に回された。逃げも隠れもせずに毒のこもった言葉を受け止める彼女は、俺よりも俺の思うよりもずっと強いのかもしれない。
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