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恋人遊戯
恋人遊戯<131>
しおりを挟む「生理現象だよ?♡ 定期的に処理しないと質悪くなっちゃうし。そしたら、将来子ども欲しくなったときに困るだろ。――それに、他の子でヌかれるほうが嫌じゃない?」
「! …………まあ、そうだけど……♡♡ 私とシてるときに他の子のこと考えてるのは論外だし、会えないときに漫画とかゲームのヒロインで妄想してるのもやだ……」
彼女が身体をびくつかせた。具体的には『子ども』という単語を出したあたりで。
(…………何、今の反応。『デキないだろう』って絶対的な安心があるから気軽にしてたのかと思ってたけど、『デキてもいい』からしてたのか? ……好きな人としかシてないってことはそういう可能性も普通にあるよな……。俺だってしたいけど、まだ早いんじゃない? 物事には順番ってものが――――いや、俺が言えたことじゃないか。正直、子どもは別に……って感じだし、紗世ちゃんが欲しいんだとしても肩身狭い思いさせたくないし、このまま続けていいよな? ……俺の感覚、間違ってないよな?)
突然、胸が締め付けられるように苦しくなったのは、彼女が背中側でTシャツを握り締めたせいだった。不安なときに余った布とか握っちゃうの、寂しがり屋さんって感じで可愛いよね♡♡
「そこは安心していいよ♡ リップサービスじゃなくて、俺は本当に紗世ちゃん以外に興奮出来ないストライクゾーン狭男だから♡♡」
「ストライクゾーン狭男って……♡ ふふふっ♡ そんな感じの歌なかった?」
口元に手を持って行った彼女は、子どもの作り方さえ知らない無菌室育ちのお嬢様さながらに清らかな微笑を浮かべていた。
「ああ、平成最後のソロアイドルの?」
「そう! …………地味にそういうの詳しいよね、千尋くん。好きなの?」
彼女の声が尖る。でも、彼女の声は元々が甘くて可愛いので、尖ったところでせいぜいとんがりコーンの先端くらいだ。
(一時期、とんがりコーンにクリームチーズ詰めてブラックペッパー挽いたおつまみ食べ過ぎてウエストがピンチとか言ってたおぼえあるけど、あれってほんとだったのかな。気のせいじゃないかと思うけど)
詳しいも何も、俺たちは同い年だし、流行りものは特別にアンテナ張ってなくても情報のほうから入ってくるものだと思うけど。――という言葉は飲み込んで、『好きか嫌いかで言えば好き』というのをなるべく遠回しな表現で伝えることにした。
「歌はわりと。あの事務所、所属アイドルが軒並みレベル高いし、変に媚びてなくて好感持てるんだよ。女性アイドルにありがちなやりすぎなぶりっことかくねくねした気持ち悪い動きする人いないし。あと、プロデューサーの作る曲が好み。キャッチーで懐かしい感じでさ」
「…………やっぱり詳しくない?」
除湿してない室内と同じくらいじとっとした目を向けられた。
「詳しくないよ?♡ 俺のアイドルは紗世ちゃんだけだし♡♡」
「……すっごい誤魔化されてる気分なんだけど……!♡」
「嬉しいんだろ?♡ ここは誤魔化されといてよ♡♡」
つんと尖った鼻の頭にキスを落として、彼女の機嫌が持ち直すのを待った。
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