yours-夢の罪過-

恋人遊戯

恋人遊戯＜164＞

「…………だったら、もっとちゃんと抱いてくれたらいいのに…………♡♡」　

　物言いたげに開いては窄まっていた口が、気持ち大きめに開いた。そこから飛び出してきたのは、おおかた殺そうとしたのに仕留めきれなかった本音だろう。

「そうだね？♡♡ 俺もさあ、『もっと激しくズコバコしたい』とか『早く肌と肌くっつけたい』みたいなことをちっとも考えてないってわけじゃないんだよ♡」

　そう告げるなり、彼女の腰が揺れ出した。――でも、まだだ。まだあげられない。単に意地悪をしているわけではなく、今カラダを繋げてしまえば次の愛撫に差し支えるという理由から、俺には彼女のおねだりをスルーする必要があった。
　
「でも、フル装備の紗世ちゃんにはフル装備の紗世ちゃんの、脱がしかけの紗世ちゃんには脱がしかけの紗世ちゃんの、下着姿の紗世ちゃんには下着姿の紗世ちゃんの、素っ裸の紗世ちゃんには素っ裸の紗世ちゃんの……って感じでそれぞれの可愛さがあって、俺は全部楽しみたいから、もうちょっと待っててほしいってわけ♡♡」

「ほんと？♡♡」　

　純粋な彼女は俺の方便をすっかり信じ込んで、顔中塗り潰すみたいにキスを浴びせてきた。

「……大体さあ、『脱がすの面倒』なんて俺が言うと思う？♡ 予約してまで手に入れた服だって、一番楽しいのは――買ってよかったと思うのは――届いた現物を開封する瞬間だろ♡ 大切に丁寧に梱包されたかわいこちゃんを、なるべく包装を壊さないように出してあげるのが最高なんだよ♡♡ 俺はわりかし器用なほうだけど、それでも結構神経使うからね？♡ でも、その分綺麗に出来たときの達成感も大きいの♡」

　今は俺に愛でられるために存在している曲線を記憶させるように、メリハリのあるカラダを撫で回す。肩を開かせて、腋の窪みを押し込んで次は胸だと思わせておいて、鎖骨のリンパを流したあと、ようやく胸の膨らみに触れた。

「理由なんてどうだっていいって言ったら誤解されちゃうかもしれないけど、どんな理由だとしても私のことも私の身に着けてるものも大事にしてくれて嬉しい……♡」

　よほど気持ちよかったのか、瞼を閉じて脱力していた彼女が感激したようにほうっとため息に似た吐息を漏らした。やや滑舌が甘いのは、眠気を誘引してしまったせいだろうか。

　――――こ・こ・ま・で・俺・の・計・画・通・り・だ。彼女が油断しているうちに服を捲り上げ、ブラジャー目掛けて飛び込んだ。
　
　そう。確かにブラジャーに飛び込んだと思ったのに谷間に着地してしまったのは、内なる願望のあらわれだったのかもしれない。