酒涙雨で終わりにしようか?君の心臓を天に捧ぐから。

蘇 陶華

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魔女の宴

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キリアスは、外に出ると夜の空気を胸いっぱい吸った。濃密な夜の空気が胸にいっぱい広がる。星は、広がり、冴え冴えとした光が、犀花の体の隅々にまで、広がった。
「長かった・・・」
振り返ればあの日を境に、自分の体は、幾つにも切り裂かれ、長い時間をかけて大陸を横断してきた。何かに導かれるように、海を渡り、この地にたどり着いた。
「ようやく、自分の体に戻った」
夜の闇に、キリアスの体は、光を得た植物の様に、背伸びをした。広がる髪の中を夜風が抜けていって、気分が良い。
「さて、ハワード。わかっているわね」
キリアスは、無表情な冷たい眼差しを、向ける。
「本当に、私が戻る為には、何が必要なのか、わかる?」
ハワードは、頷き、細い長い鞭で、宙を斬ると、幾つもの紅い花びらが、舞い上がり散っていった。
「用意してあります」
散った花びらは、雨の様に地に落ちていく。ひらひらと舞いながら、ゆっくりと地に触れると、赤黒い水たまりへと形を変えていった。
「面倒な事をするのね」
キリアスは、宙に舞っている赤い花びらを掌で、包むと、口元へと持っていった。
「こんな方法しか、考え付かなかったの?」
責めるような眼差しで、まるで、スイーツでも、食べるかの様に、口に流し込もうとする。
「止めくれ」
「あら?」
現れたのは、ナチャだった。
「どうしたの?家で、のんびりしていたんじゃなかったの?」
キリアスは、思い直したのか、犀花の口調を真似て話しかけた。ハワードとキリアスの前に現れたのは、帰宅が遅い事を心配し探しに来たナチャだった。ナチャは、異様に鼻が効く。犀花の体内から漂う匂いの変化を微妙に勘づき、驚きの声をあげていた。
「そんなの口にして、ダメだよ。マスター」
キリアスは、自分をマスターと呼ぶ、ナチャの様子に薄く笑った。
「私をマスターと呼ぶのか」
キリアスは、吹き出した。
「おかしな生き物になったな」
「ナチャは、何も覚えておりません」
キリアスは、手を差し出しナチャの目を覗き込んだ。
「思い出してはならぬ。汚れた過去だ」
キリアスは、差し出した手で、ナチャの顎を押した。
「証拠にもなく、私のそばにいたのか」
「探しあてた様です」
ハワードは答えた。もはや、自分の弟だった事なんて、遠い過去の様だ。
「もう、お前達いの償いは、終わっている。離れてよし」
キリアスの向けた手は、青白い光を帯び、ナチャの肩を後ろに押した。
「顔を見せるな」
様子も、匂いも、変わったしまった犀花の様子にナチャは、悲痛な声を上げた。
「マスター!一体、何があったんです?その傍にいるのは、誰なんです?」
ナチャの悲痛な声に、
「お前には、関係のない者だ」
ハワードの、鞭が闇の中に伸びていき、ナチャの首に巻きつく。
「そのまま、締め上げろ」
キリアスは、鞭がミシミシと音を立て始める。キリアスは、苦しむナチャの姿を動じる事なく、腕を組み見下ろした。
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