架空戦記 隻眼龍将伝

本能寺から始める常陸之介寛浩

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壱の章 1589年 独眼竜

壱の弐

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「殿、このようなことは御慎み下さい」

そう片倉小十郎景綱が窘めていた。

「ん?命をかけて戦ってくれた兵たちと酒を酌み交わして何が悪い?」

「そうではございますが、伊達家当主としての威厳を持っていただけねば」

「小十郎、威厳だけでは兵たち、民たちは動かぬぞ、それに戦場で
顔の知らぬ主より顔の知った主のほうが命令も受け入れやすいのではないか?」

「ですが、殿」

「まあ良いではないか、今日ぐらいは」

「はあ、それより皆が大広間でお待ちです」

政宗は大広間で重臣たちと蘆名を打ち滅ぼした先勝の宴に酔いしれた。

関白、豊臣秀吉が惣無事令を日本各地の大名に命じ私闘を禁じる中、
それを無視して伊達政宗は宿敵である蘆名軍を磐梯山麓の摺上原でことごとく蹴散らし
蘆名家当主義広は実家の常陸佐竹家へと逃亡、蘆名家の本拠地であった黒川城に
伊達軍が入城した。
黒川城は、磐梯山麓にある盆地の会津にある巨城である。
戦勝によって佐竹家側に付いていた結城義親・石川昭光・岩城常隆らが次々と服属、
勢力圏は大きく拡大した。
伊達政宗は豊臣秀吉が奥州に攻め込む前に勢力圏を拡大し対抗出来うる戦力を持とうと
画策していた。
しかし、豊臣秀吉の勢いは強く、関東の後北条との戦いが始まろうとしていた。



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