架空戦記 隻眼龍将伝

弐の章 1590年 陰謀

弐の伍

１５９０年　伊達政宗

黒脛巾組は伊達家軍師片倉小十郎景綱の命で京・大阪に潜入し情報を逐一伝達しながら豊臣秀吉を見張っていた。
北条征伐で秀吉が出陣するとそれを小十郎に知らせる。
もちろん、豊臣秀吉からの正式な使者も参陣するようにと知らせには来ていた。

「殿、秀吉がいよいよ出陣いたしました」

「そうか、で、猿狩りは出来そうか?」

「はい、手はずは整えてあると」

「では、吉報を待とう、成実は内々に出陣の準備に取り掛かれ」

「は、で、攻め込む相手は?」

「ここよ」

関西から奥州まで書かれた地図を指さす政宗。

「なるほど、小田原に参陣し手薄になったところを一気に攻め込むのですね」

「その為には、猿には小田原まで来てもらわねばならぬ、今死なれたら北条征伐が頓挫してしまう」

「猿を効果的に使ってから狩るとは考えたものですな」

「小十郎、北条氏政殿に使者を」

「はっ、口上は?」

「この政宗、盟約に従い救援いたす、そのための条件として利根川より北は一切構いなしとすることとな」

「わかりました」

「それと、猿狩りだが、北条の忍びを使えぬか?」

「風魔でございますね、板部岡雪斎に頼むことが出来ますが黒脛巾組では心許のうございますか?」

「猿狩りが終わった後のことを考えての事だ」

小十郎は察した。

「なるほど、では手引きは黒脛巾組が実行は風魔がいたすよう手配いたしましょう」

成実は首をかしげていた。

「まどろっこしい、黒脛巾組がやれるのであれば黒脛巾組がやったほうが良いではありませんか?」

「成実殿、もし、殿が暗殺されましたらいかがいたします?」

「知れたことよ、暗殺者を突き止めて一族郎党皆殺しにしてくれる」

「それでございますよ、猿一匹は狩れても兵はまだまだ残ります。その兵の矛先を少しでもこちらに向けさせないようにするためには?」

「なるほど、暗殺は北条がやったこととすれば」

「そういうこと、北条と豊臣勢と争っているうちに我々は領地を拡大する」

「殿も、小十郎も考えますな～はははははっ」

こうして、猿狩りの準備は北条の風魔一族の手を借りる形をとって進められていった。