妄想美少女脳内ポエム

本能寺から始める常陸之介寛浩

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【蒸れた足】ポエム題材

題材【演劇部女子 × 舞台 × 蒸れ × 緊張のにおい】

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「スポットライトが照らすのは、声と台詞だけじゃない。
 袖で震えるローファーの中にも、“わたしの物語”が残ってる」



『わたしの足音は、ローファーの中で震えてた』


 

 リノリウムの床に立つたびに、
 足の裏がじんわり熱くなる。

 リハーサルじゃ感じなかった汗が、
 本番前の数分で一気にあふれ出す。

 舞台袖は静かで、
 でも、空気はぎゅっと詰まってる。

 心臓の鼓動と一緒に、足元から“わたし”が滲んでくる。

 ***

 緞帳の向こうでざわめく客席。
 袖で待機するわたしは、
 セリフのことより、
 今この瞬間、ローファーの中でこもってる“湿気”のことを意識してた。

 汗ばむ靴下。
 締めつける革。
 爪先の先にたまる、わたしの緊張の匂い。

 誰にも見えない。
 でも確かに、この“蒸れ”はわたしだけの物語だ。

 ***

 照明が上がる直前、
 こっそりローファーを脱いだ。

 このままじゃ、セリフが震えそうだったから。

 地に足をつけたくて、
 “演じるわたし”じゃなく、“踏ん張るわたし”でいたかった。

 靴の中には、
 緊張と汗と、数週間分の稽古が染みこんでた。

 ちょっとくさい。
 でも、それがなぜか愛おしかった。

 ***

 舞台って、光だけじゃできてない。

 袖の暗がり、
 踏みしめる音、
 握りしめた手汗、
 そして、靴の中で育った“わたしのにおい”も、その一部だった。

 稽古のたび、
 うまくいかなくて泣いた夜、
 演出に怒られて、悔しくて黙った昼。

 そういうのが、
 全部ローファーの中に閉じこめられて、
 舞台の上で一気に蒸発していくようだった。

 ***

「演じる」って、
 どこまでが演技で、どこまでが自分なんだろう。

 靴の中に残る湿り気だけが、
 “演じたあとに残ったわたし”の正体だった気がする。

 拍手を浴びるとき、
 わたしはきっと、
 自分の匂いさえ忘れている。

 でも袖に戻った瞬間に、
 その蒸れがふたたび蘇って、
「ちゃんと頑張った」って言ってくれる気がした。

 ***

 ローファーを袋に入れて帰る帰り道、
 制服の足元が少し冷えていた。

 でも、そのローファーだけは、あたたかかった。

 今日という舞台が、
 わたしの汗と緊張でできていた証拠。

 一歩も動けなかった初舞台。
 それでも靴の中だけは、
 しっかりと“わたし”が存在していた。

 ***

 これから先も、
 何度も靴を履き替える。

 衣装も役も変わる。
 でも、
 ローファーの中で蒸れたわたしは、ずっと忘れないと思う。

 舞台袖で震えていた足元。
 スポットライトに入る前に脱いだ一瞬。
 息をひそめて、でも確かに汗ばんでいたわたし。

 それが、
 ほんとうの「はじまりの一歩」だった。

 ***

 汗と緊張が染みついた、あのローファー。

 もしも、
 また舞台に立つ日がくるなら。

 もう一度、
 その靴を履いていこうと思う。

 においごと、震えごと、過去のわたしを全部連れて――
 今度は、もう少し強く立てる気がするから。

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