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第三章 美少女と異世界生活

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暗い闇の中を俺は飛んでいる、飛んでいるというのは不適切か。
暗い闇の中のため自分がどのような状態なのかわからない。
ふわふわと浮いているようなと感じれもするし、水に沈んでいるのかと言われれば、そうなのかもしれない。
体を自由に動かせる状態でもない、手足が付いているのかすらわからない。
暗いくらい闇、あれ?俺また死んだのか?閻魔ちゃん登場か?しかし、なかなか闇は抜け出れない。
すると、何やら良い香りがしてくる。花の香だろうか、少し甘みのありそうであって、だからと言って主張しすぎない良い香りがする。故郷の偕楽園を思い出す。
春の梅祭りの優しい匂いを感じる。
体が自由には動かせないみたいだが、嗅覚は生きているらしい、活動しているらしい。
懐かしさにその匂いを吸い込もうと思うと目が覚めた。
天井は木目が渋さを出している木の板のようだ。
周りを見るために首を動かすと、どうやら俺はベッドの上に寝かされている。
枕元には、梅によく似た植物が花瓶で花開いていた。
どうやら、今までの物語は夢だったようだ。
ここはきっと病院か療養所で俺は、駅で倒れて長い眠りにでも入っていたのだろう。
体を起こすと、ベッドのわきには桜色のロングの髪が印象的だったミライアがコクラコクラとしながら椅子にもたれかかり寝息を立てていた。
夢落ちではなかったのか。

「あっ気が付きましたか?」

俺がもぞもぞしているとその音が気になって目を覚ましたのだろう、ミライアが立ち上がった。

「あの~ここは?」

「はい、私の家なんです。村からは少し離れていて村の皆さんに手を借りてクジ様の事、運んできました。
私、一応、治癒魔法を習得していますのでお体を失礼ながら見させていただきましたが」

ん?あれ?俺すっぽんぽんじゃん、布団はかろうじて下半身は隠れていた。
薪ストーブに火が点いており寒くはない。

「お体はどこも悪くはないようなのですが、お心に黒い靄がかかっているのが見えまして、申し訳ありません、お心の病には魔法で治すことが出来ないもので」

そうか、体は転生時に若々しい肉体とはなったが鬱病は治っていなかったか、そのくらいサービスして欲しかったな。
俺は前世で死ぬ前に、鬱病で半年間休んでいた。
根治までとはいかなく、服薬治療を続けながら会社復帰をした。
傷病手当だけでは家のローンを払えないから無理をした。
鬱病にはいろんな種類があり私は心のモヤモヤと表現せざる負えない心の不調と同時に身体に異常をきたすタイプ、とにかくあっちこっちがズキズキと痛むタイプと、ストレス性高血圧の発症をしていた。
今は確かに体の痛みは感じないが、心のなんとも表現しがたいモヤモヤは取れてはいなかった。

「この国では、気鬱の病と呼んでおりまして、静養をすることが一番となっております、もしよろしければこちらでしばらく休みませんか?」

「ご迷惑では?」

「いえ、家族もいませんし、クジ様は命の恩人、そのくらいのことをするのは当然ですので気にせずこちらで休んでください」

行く当てもない、また人ごみに出くわしパニック障害で倒れることもなくはないだろう。
ここはお言葉に甘えてしばらく休ませて貰おう。

「あの~では、ギルドで貰ったお金ありましたよね、あれを私の滞在費として使っていただき、私をここに置いてもらってよいですか?」

と、言うと先ほどから心配しているどこか落ち込んだ表情だった、ミライアがパッと花が開いたかのようにとてもやさしい笑顔になり、

「はい、喜んでお身の回りのお世話させていただきますね」

と、言ってくれた。
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