「突然、幼馴染が『これから女の子として生きる』って言い出したんだけど、俺、どう反応すればいいんだよ！？

第28話：「選ばれし未来へ、ふたりの手が触れ合うとき」

　翌日、学校の校庭に出ると、空はどこまでも青く澄み渡り、風が爽やかに吹いていた。
　誠は、あの夜からずっと感じていた不安を打ち消すように、奏と一緒に歩いていた。

「誠、今日、少し話したいことがあるんだ。」

　奏が、突然真剣な顔で言った。
　その言葉に、誠は少しドキっとして立ち止まる。

「どうした？」

「……実は、少しだけ迷ってることがあって。」

「迷ってる？」

「うん。私、最近、誠ともっと近づきたいと思ってる。でも、それと同時に、これから私がどうやって生きていくのか、もっとしっかり考えないといけないなって思うんだ。」

　誠は少しだけ驚き、その視線を奏に合わせた。

「それって、どういうこと？」

「私は、今、誠と一緒にいることが幸せだって感じてる。でも、それをずっと続けていくためには、自分の未来についてもきちんと決めないといけない気がして。」

　誠は少し考え込み、そして静かに言った。

「未来って、どんな未来を考えてるの？」

　奏は少し考えた後、誠に向き直って答える。

「自分を偽らずに、自由に生きていきたい。それが、今の私にできる一番大事なことだと思う。
　でも、誠との関係も大切にしたい。そのバランスを取るのが、難しい。」

　誠はゆっくりと深呼吸し、奏の手を握った。

「俺も同じだよ。奏といることが嬉しいし、これからも一緒にいたい。でも、それと同時に、奏が自分の人生をどう生きるのかを応援したいと思う。
　だから、俺は君の選ぶ未来を、ちゃんと支えていくつもりだよ。」

　その言葉に、奏は少し涙を浮かべながら微笑んだ。

「ありがとう、誠。私は自分の道を決める覚悟を持ってる。でも、どんな道でも、誠がいるからこそ、前に進める気がする。」

　その夜、誠の部屋で
　帰宅した後、誠はスマホを取り出し、画面を見つめていた。

【奏：ありがとう、誠。今日、すごく楽になった。】
【誠：俺も。これからも、一緒に歩んでいこう。】

　その後、誠は心の中で誓った。
　“どんな未来が待っていても、君と一緒にいることを選ぶ。”

　その時、誠はふと気づいた。

　奏は、“自分の道”を選び、誠もそれを支えるために選ばなければならない。

　でも、それはきっと、お互いにとって最も大切な選択になると信じていた。

　翌日、学校での出来事
　翌日、誠と奏はいつも通りに教室で過ごしていたが、その日、予期せぬ出来事が起こる。

「誠、斎藤さん、ちょっといい？」

　教室のドアが開くと、そこに立っていたのは、綾瀬真白だった。

「……なんだ？」

　誠は少し警戒しながら答える。

「今日、ちょっと話したいことがあって。」

　真白は、誠に向き直って、静かに言った。

「斎藤奏さんのこと、少し前に知ってから気になってた。誠が選んだのは、斎藤さんじゃない？」

　その言葉に、誠は目を見開いた。

「……なにを言ってるんだ？」

「私は、君がどう思ってるかを聞きたいだけだよ。あの子を、本当に好きだと思ってるなら、ちゃんと伝えなよ。」

　その言葉に、誠はしばらく黙って考え込む。

「君は、奏のことをどう思ってる？」

「……奏は、私が昔のことを知っていることをわかってる。だけど、私はこれからの奏を、応援したい。」

　その時、奏が教室に戻ってきた。

「誠、何かあったの？」

「……いや。」

　誠はそのまま、何も言わずに奏に微笑んだ。

　その笑顔には、何も隠すことがない、誠の真実が込められていた。