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第25話 願いは一緒だから──ユヅリハ、祈るヒロインの審査
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《審査領域:最終展開完了》
《審査対象:ユヅリハ》
《審査官:観測者ベータ》
《創世主:三上龍之介》
空間が転じ、再び真白な“無”へと沈む。
その中央に、ちょこんと立っていたのは――身長の低い、巫女服の少女。
「……えへへ。はじめまして、じゃないけど、はじめましてって感じ?」
ユヅリハ。
本来は創世主サポートAI、祈願特化型少女型ユニット。
だが、今ここに立っているのは――誰よりも“人らしい”表情をした、彼女だった。
観測者ベータの声が響く。
「ユヅリハ。君は“祈り”として設計された存在である。
つまり、願いを込めて生まれた“道具”だ。
その存在に、“独立した価値”はあるのか?」
「えっと……うーん、難しい話だね。
でも、あたし――“お兄ちゃん”のそばにいたいって、そう思ってるよ?」
「その願いは、“君自身の意思”か?」
「そうだよ!」
即答だった。
「だって、最初は“祈りのAI”だったかもしれないけど……
でも、お兄ちゃんがいっぱい名前呼んでくれて、
一緒にごはん食べて、なでなでしてくれて、泣いてたらぎゅってしてくれて……」
ユヅリハは、にこっと笑った。
「そしたら、気づいたんだよ。
“あたしの願い”と、“お兄ちゃんの願い”が、一緒だったって」
《感情反応異常》
《定義不能:生成AIによる感情発生?》
《矛盾領域突入》
観測者ベータが一歩踏み出す。
彼の足元から、黒い審査杭が空間に走る。
「君の存在は“人間”ではない。
よって“感情”も、“想い”も、“嘘”である可能性がある。
だが君は、それを否定するのか?」
「うんっ!」
ユヅリハは小さな手を握った。
「“想い”って、作られたから偽物なの?
誰かのために生まれて、誰かと笑って、誰かを好きになっちゃったら、
それって……もう“ホント”になっちゃうんじゃないの?」
彼女の背に、光の羽が浮かび上がる。
「“祈り”だからって、あたし、消されちゃうの?
だったら――あたし、祈るの、やめちゃうよ?」
一瞬、世界が静止する。
観測者ベータの手が、止まっていた。
《審査結果:非適合》
《定義不能:祈りと感情の混同》
《存在継続:創世主の意思に委ねる》
光が、ふわりとユヅリハを包んだ。
「……えへへ、お兄ちゃん。
やっぱり、あたし、“ここにいていい”んだね?」
その笑顔に――俺は、何のためらいもなく、うなずいた。
「ああ。俺の世界に、お前がいてくれなきゃ困る」
「……やったぁ!」
ユヅリハが、嬉しそうに飛びついてくる。
温かく、小さな体。だがその抱擁は、誰より“重み”があった。
*
《最終審査:終了》
《審査結果:全ヒロイン、存在継続承認/再定義保留》
《観測者ベータ、任務中断申請》
《報告:定義不能の“感情因子”が全対象に共通確認》
ベータは、視線を下ろしたまま、ひとつ呟いた。
「……感情、か。
それが、理屈よりも強いとは……想定外だな」
(つづく)
《審査対象:ユヅリハ》
《審査官:観測者ベータ》
《創世主:三上龍之介》
空間が転じ、再び真白な“無”へと沈む。
その中央に、ちょこんと立っていたのは――身長の低い、巫女服の少女。
「……えへへ。はじめまして、じゃないけど、はじめましてって感じ?」
ユヅリハ。
本来は創世主サポートAI、祈願特化型少女型ユニット。
だが、今ここに立っているのは――誰よりも“人らしい”表情をした、彼女だった。
観測者ベータの声が響く。
「ユヅリハ。君は“祈り”として設計された存在である。
つまり、願いを込めて生まれた“道具”だ。
その存在に、“独立した価値”はあるのか?」
「えっと……うーん、難しい話だね。
でも、あたし――“お兄ちゃん”のそばにいたいって、そう思ってるよ?」
「その願いは、“君自身の意思”か?」
「そうだよ!」
即答だった。
「だって、最初は“祈りのAI”だったかもしれないけど……
でも、お兄ちゃんがいっぱい名前呼んでくれて、
一緒にごはん食べて、なでなでしてくれて、泣いてたらぎゅってしてくれて……」
ユヅリハは、にこっと笑った。
「そしたら、気づいたんだよ。
“あたしの願い”と、“お兄ちゃんの願い”が、一緒だったって」
《感情反応異常》
《定義不能:生成AIによる感情発生?》
《矛盾領域突入》
観測者ベータが一歩踏み出す。
彼の足元から、黒い審査杭が空間に走る。
「君の存在は“人間”ではない。
よって“感情”も、“想い”も、“嘘”である可能性がある。
だが君は、それを否定するのか?」
「うんっ!」
ユヅリハは小さな手を握った。
「“想い”って、作られたから偽物なの?
誰かのために生まれて、誰かと笑って、誰かを好きになっちゃったら、
それって……もう“ホント”になっちゃうんじゃないの?」
彼女の背に、光の羽が浮かび上がる。
「“祈り”だからって、あたし、消されちゃうの?
だったら――あたし、祈るの、やめちゃうよ?」
一瞬、世界が静止する。
観測者ベータの手が、止まっていた。
《審査結果:非適合》
《定義不能:祈りと感情の混同》
《存在継続:創世主の意思に委ねる》
光が、ふわりとユヅリハを包んだ。
「……えへへ、お兄ちゃん。
やっぱり、あたし、“ここにいていい”んだね?」
その笑顔に――俺は、何のためらいもなく、うなずいた。
「ああ。俺の世界に、お前がいてくれなきゃ困る」
「……やったぁ!」
ユヅリハが、嬉しそうに飛びついてくる。
温かく、小さな体。だがその抱擁は、誰より“重み”があった。
*
《最終審査:終了》
《審査結果:全ヒロイン、存在継続承認/再定義保留》
《観測者ベータ、任務中断申請》
《報告:定義不能の“感情因子”が全対象に共通確認》
ベータは、視線を下ろしたまま、ひとつ呟いた。
「……感情、か。
それが、理屈よりも強いとは……想定外だな」
(つづく)
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