美少女閻魔と転生剣聖、異世界戦国から宇宙征服へ──これは俺の天下布武録

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第30話 観測者は、恋をする?──文化祭、混線と感情のはじまり

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「す、すごい……人間の文化、予想以上に密集しています……!」

 

 文化祭本番当日。
 アリエルは、昇降口の時点ですでにキャパオーバーだった。

 

「おいアリエル、ここは“戦場”だ。気を抜くと転ばされるぞ」

 

 夜月が真顔で警告し、レイナが平然とメモを取っている。

 

「彼女の表情変化。観測者としての中立性が著しく乱れている。
 “楽しい”という感情が強く干渉しているな……」

 

「うわぁ、あっちの教室、“幼なじみ喫茶”だってー!」
「そっちは“異世界から転生してきた店員がいる”カフェだぞ!」

 

「それ文化どころか概念が混ざってるぅ!?」

 

 

 そんな中、俺たちのクラス――“ラーメン喫茶・ドラゴン軒”は、行列ができるほどの盛況だった。

 

「いらっしゃいませーっ! お熱いの、お運びしますっ!」

 

 メイド服姿のユヅリハが、お盆片手に走り回りながら暴走。
 厨房では、夜月が湯気と闘いながら本気で湯切りしている。

 

「麺を斬るな夜月!出汁まで斬る気か!」

 

 

 そして――看板娘、その1。
 アリエルがカウンターで、微妙な角度で笑っていた。

 

「……いらっしゃいますっ!(声裏返り)」

 

 制服の上にちょっとサイズの合ってないエプロン、
 額には“おでこ冷却シール”のような観測バンドが残っている。

 

 だけど、誰よりも一生懸命。

 

 

「お兄ちゃん、アリエルちゃん、目が完全にパニックモードだよ!」

 

 ユヅリハが言った直後――

 

「きゃっ……!」

 

 アリエルが手元を滑らせ、湯気の立つラーメン丼が、宙を舞った。

 

「あぶなっ――!」

 

 俺は、咄嗟に彼女の手を引いて、引き寄せた。

 

 その瞬間――

 

 背中が机にぶつかる音。
 丼が無事に着地する音。
 そして――

 

 アリエルの顔が、俺の胸元に埋まる感触。

 

「……っ」

 

 小さな肩が震える。
 俺は、ゆっくりとその背中に手をまわした。

 

「……ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

「いいよ。ケガ、ないか?」

 

「…………ないです。
 でも、でも、“どきっ”てしました……」

 

 

 その言葉に、俺はちょっとだけ、鼓動が跳ねた。

 

「……“どきっ”って、記録にはあったんです。
 でも、まさかこんな風に来るとは、思ってなくて……」

 

 

 アリエルは俺を見上げて言った。

 

「わたし、観測してたはずなのに、
 今は……観測じゃなくて、記憶に、残ってほしいって思いました」

 

 

 言葉の意味なんて、今は分からなくてもいい。

 

 ただ――彼女が“観測者”ではなく、
 “ひとりの少女”として笑い始めた、その瞬間だった。

 

 

 *

 

 その日の文化祭は、大成功だった。

 

 ユヅリハはコスプレコンテストで“元気すぎる妹枠”優勝、
 夜月は「刀湯切り実演」で謎のファンを獲得、
 レイナは「抹茶プリン」に“戦慄の再現率”と称賛され、
 天照は和装で登場して「巫女って尊い」と言われていた。

 

 そして、アリエルは。

 

「……ふつう、って、まだよく分からないけど……
 今日みたいな一日が、ずっと続けばいいって、
 ちょっとだけ、思ったんです」

 

 

 それは、最初の“ときめき”。
 そして、最初の“恋”の入り口だったのかもしれない。

 

(つづく)
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