同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第八十四話 初詣は嵐の予感、恋の神籤(こいみくじ)大乱舞

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 元日の朝。……というか昼前。

 昨夜の“布団ヒロイン囲まれ事件”のせいでほとんど寝られなかった俺は、目覚ましも聞こえず、ようやくぼんやりと布団の中で現実を受け入れ始めていた。

 周囲からは、小さな寝息と、いびきと、ストーブのゴォーという音。

「……お兄ちゃん、起きて」

 こたつから這い出した碧純が、パーカー姿で俺の肩をつつく。

「初詣、行くんでしょ? みんな、楽しみにしてる」

 その一言に目を覚まし、俺は寝ぼけ眼のままリビングへ。

 すでにヒロインたちは着替えを終え、冬仕様のあったかコーデに身を包んでいた。
 イザベラに至っては、振袖スタイルで完璧にキメている。

「日本の“初詣”文化、実に風情がありますわ」

「真壁くん、どこの神社に行くの? 恋愛運の強いとこがいいな~」

「私は観察兼祈願……『平穏な日常』が来ますように」

「ルナは『混沌なる契約の再来』とか願いそう……」

「え、うそバレた!?」

 こうして、俺たちはぞろぞろと近所の神社へ向かった。

 境内はそこそこ賑わっていて、出店の甘酒や焼き団子の匂いが、鼻腔をくすぐる。

「なあ、みんな……普通に参拝だけして帰ろうな?」

「もちろん、恋みくじだけは引くけど?」

「もちろん、真壁くんとおそろいの絵馬も書くよね?」

「初詣という名の“公開好感度勝負”ですよ、これは」

「おい、俺の平穏どこいった……」

 そして迎えたおみくじタイム。

「よっしゃ、恋愛運大吉! これはもう今年こそ——」

「えっ!? わたし小吉……でも“意外な恋が芽生える”って! 真壁くんのことじゃない!?」

「ふふ、私は末吉……“焦らず見守れば実る恋”。悪くないですわ」

「真壁くん。私、凶だったんだけど“逆に印象に残ってもらえる”ってことでは?」

 まさかの恋の神籤バトルが開幕。
 それぞれが解釈を捻じ曲げて、俺への“恋の未来”を語り出す。

 俺は神様に祈った。

「頼む、せめてこの初詣が無事に終わりますように——」

 だけど、神様はたぶん、このドタバタを見て楽しんでいたと思う。

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