同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第一〇八話 妹、動く──宣戦布告の夜

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夕食時。
 リビングにはテレビの音だけが流れていた。
 俺はシャワーを終え、いつものように食卓へ向かった。

 食器は並べられていた。
 味噌汁の湯気が立ち、炊き立ての白米の香りが広がる。
 けれど、そこにはいつもの“あたたかさ”がなかった。

「……いただきます」

 静かに箸を取る。

 対面には、妹・碧純。
 しかしその顔には、一切の笑みも色もなかった。

「……碧純?」

「なに?」

 それだけ。
 目も合わせない。
 手元の味噌汁を淡々と口に運んでいるだけ。

 嫌な空気が、ひしひしと伝わってくる。

「……なんか怒ってる?」

「怒ってないよ」

 怒っているときのテンプレ返答、第一位。

「な、なあ……本当に、なにかあったなら言ってくれよ」

 その言葉に、ようやく彼女は顔を上げた。
 その目は、怖いほどに冷えていた。

「じゃあ、訊くけど。
 女物のパンツとブラ、三組、カバンに入れてる兄って普通だと思う?」

「…………っ」

 一瞬で、胃が凍りついた。

「ルナちゃん、ひよりちゃん、りあちゃん……全部、見覚えあるブランドだった」

「ま、待て、それは、ちが……いや、違わないけど!」

「パンツだけならまだしも、ブラジャーまで三人分って、どういうこと?」

「それはっ……あいつらが勝手に入れてきて! 俺は! 別に頼んでないし!!」

 言い訳にもならない叫び。
 でも、言わずにいられなかった。

 碧純は立ち上がった。
 制服のスカートが揺れる。
 その姿は、まるで処刑人のように静かで、冷たかった。

「弘弥。
 今日から、私も戦うから」

「……え?」

「私だけが、“妹だから”って我慢するの、おかしいでしょ」

「ちょ、ま、戦うって……何を!?」

 彼女は背を向け、廊下に出ながら呟いた。

「弘弥の“恋人の座”、ぜんぶ私が奪ってやる」

 そして、パタンと扉が閉まる。

 俺は、その場で固まっていた。
 味噌汁の湯気だけが、空しく流れていた。

(つづく)

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