同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第一二三話 静かなチョコ戦争──ヒロインたちの“あと出し”逆襲

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バレンタイン当日、放課後。

 俺のロッカーの中には、信じられないほどの“個性豊かな贈り物”が詰め込まれていた。
 チョコ、チョコ、またチョコ——そして、折りたたまれた下着各種。

 しかし、なにより俺の心を動かしたのは……

 碧純の“パンツなし”チョコだった。

 それが静かな逆襲を生むとは、このときはまだ知らなかった。

「ねえ、すみれ。アレ、見た?」(瑠衣)

「……ええ。まさか“無し”で来るとは思わなかったわ」(すみれ)

「観察記録:逆張り型アプローチ、効果あり。心理揺動:中~大」(ひより)

「ふん。我も本気ならば“本命以上”を示さねばなるまい……」(ユナ)

「わたくしも、外交手段だけで勝てるとは考えておりませんわ」(イザベラ)

 ヒロインたちはそれぞれ、静かに牙を研ぎ直していた。

 ——そして翌日。

 俺の机に、ふたつ目の“本命”チョコがそっと置かれていた。

 すみれの名前が、控えめな筆記体で添えられていた。
 そして中には、詩が一枚。

《あなたの言葉が、わたしの中で甘く溶けていく。
わたしの心は、ただ一度、あなたに溶けてしまえばいい》

(……すみれ……)

 文章だけで、チョコより甘い。
 でもそれだけじゃない。
 奥底に、“覚悟”があるのを感じた。

 次に現れたのは、ひよりだった。

「弘弥くん、これ。渡しそびれていた“研究結果”です」

 チョコの箱と一緒に、観察ノートのコピー。
 そしてそこには……

《対象の幸福指数最大時:チョコを受け取った瞬間。
わたしも、その原因のひとつでありたい》

 ……思わず息を呑んだ。

 瑠衣は、放課後。
 俺の手に無理やりチョコをねじ込んだ。

「はい、追加の本命! パンツつけないからエロくないよ!? ね!? ……でも、気持ちはこっちのほうがエロいかも♡」

 ドキリとした。
 彼女の“ふざけ”の奥に、本気の目があった。

 そしてイザベラは、夕方。
 再び姿を現した。

「弘弥様。王家の慣習では、翌日にこそ“真の誓い”を贈るものです」

 差し出された小箱。
 開けると、金の箔押しで書かれた手紙。

《あなたの心が選ぶものに、私は嫉妬し、そして喜びます。
だから私は、あなたの隣に立てる日まで、何度でも誓います》

 ——静かな、けれど熾烈な“あと出し”本命戦争。

 そしてその夜。
 机の上に置かれた“チョコたち”と“手紙たち”を前に、俺は頭を抱えていた。

「どれも……本気すぎる……」

 静かな戦争は、俺の中でますます混迷を極めていた。

(つづく)
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