同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第一二九話 地獄鍋解禁──混沌と涙と笑いのスープ

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「じゃ、始めよっか! 闇鍋、開幕!」

 瑠衣の明るい声がキッチンに響いた。

 大鍋の中に、具材が次々と投下されていく。
 誰が何を入れたか、わからない。
 匂いがすでに混沌。

 チョコレートの甘さ、コンニャクの弾力、納豆の香り、唐辛子の刺激、そして……呪符。

「……湯気から、何かの気配が出てる気がする……」(弘弥)
「我の式神かもしれぬな。鍋の中で具現化しておる……ふふ」(ユナ)
「こ、こわっ!? 鍋からなにか出たらどうするの!?」(碧純)

 ぐつぐつと音を立てる鍋の前に、全員が正座。
 鍋奉行は、なぜかイザベラ。

「では、皆さま。弘弥様より、どうぞ」

「……まじか……俺、トップバッター!?」

 おたまを手に取ると、鍋からはなんとも言えない異臭が漂う。

 すくい上げたのは——

「これは……白い……? けど粘性がすごい……そして、海苔っぽい見た目……」

 箸で口に運ぶ。

「んぐっ!? ……に、苦っ!? いや、これ……なにこれ、苦みと辛みと……炭!?」

「はい! わたしのだよーん♡」(瑠衣)
「お前かあああああああああ!!」

 ヒロインたちは大爆笑。

「次はこれ! 柔らかくて、妙に甘い……?」

 一口。

「……うまい!? ……これ、普通にデザート!? いや、ちょっととろけて……」

「それ、わたしです」(すみれ)
「救い……女神……!」

 その後も、順番に食べては誰のかを推理。

「このカレー味納豆団子は……ユウだろ!? ……違う!? 嘘だろ!?」
「それ、イザベラ様のだよ」(碧純)
「お前もかあああああ!!」

 笑いあり、涙あり、嗚咽あり。

 なぜか、食後に感動の拍手が起きるレベルのカオス鍋。

「でも、なんか……楽しかったね」

 ふと、ひよりが言った。

「弘弥くんの表情、いつもよりたくさん動いてた気がする。観察しがい、あったな」

「観察前提!?」

 夜も更け、鍋の片づけを終えた後、皆でソファに集まった。

「今日は……泊まっていい?」

 すみれのひとことに、他のヒロインたちも次々に——

「泊まる」「泊まる!」「当然だ」「魔導陣展開済み」

「布団どうすんだよぉぉぉぉ!!」

 春休みの夜は、まだまだ終わらない。

(つづく)

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