同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第一五〇話 春の体育祭──駆ける想いと恋のバトン(前編)

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 春風が校庭を駆け抜ける季節。
 陽射しがまぶしい空の下、第二学期の恒例行事——春の体育祭がついにやってきた。

 俺たち2年B組は、朝から教室でゼッケンを付け合ったり、最後の作戦会議をしたりと、すでに戦闘態勢だった。

「弘弥くん、リレーのアンカーお願いね」

 すみれが、いつもより少し楽しげな笑顔で言ってきた。

「え、アンカー!? 俺、そんな速くないけど……」

「でも、目立つし。主役はやっぱり“君”がいいと思って」

 この人、さらっとハードル上げてくるな……。

 一方、碧純は腕まくりしながら立ち上がっていた。

「弘弥お兄ちゃんがアンカー!? よし、私が第一走者ね。トップでバトン渡す!」

「……いや、他にも希望者いるんじゃないか?」

「ダメ、これは“妹の意地”だから」

 隣では瑠衣がTシャツをくくり上げながら胸を張る。

「私の応援があれば、ひろくん絶対勝てるって~♡」

「お前の応援、たいてい集中力下がるんだよ……」

 ひよりはいつものように記録帳を取り出していた。

「体育祭データ収集中……走力、心拍、視線変動値、声援との相関性……」

「観察に専念しないで少しは出場しようって気にならんのか」

 ユナはというと、赤組の鉢巻を額に巻きながら謎のポーズを取っていた。

「我が魔力は“風速強化型”……走りながら詠唱することで加速可能……」

「それ反則じゃねぇの!?」

 そして、イザベラはといえば——

「弘弥様、スポーツは不得手ですが……応援は全力でいたしますわ」

 大和撫子かと思いきや、外国王女スタイルの応援で目立ちまくっていた。

 そんなこんなで、午前中の種目が続く中——

 昼休み。
 教室に戻った俺は、弁当を広げようとした瞬間、ヒロイン全員に囲まれていた。

「ねぇ、お弁当一緒に食べよ♡」(瑠衣)
「わたし、弘弥様のためにおにぎりを……」(イザベラ)
「お兄ちゃん、私のおかず全部あげるから!」(碧純)

「……結論:落ち着いて食事できる環境ゼロ」

 ひよりの冷静な分析を聞きながら、俺は一番影の薄かった“体育倉庫裏”に逃げることに成功した。

 ……が。

「みーつけた♡」

 結局、瑠衣が先に見つけてきて、その後もぞろぞろと全員集合。

 にぎやかすぎる昼食タイムの後は、ついに午後のメインイベント——クラス対抗リレー。

「碧純、頼んだぞ!」
「任せて!」

 最初のピストルが鳴る。
 碧純が勢いよくスタートを切った。

 軽やかに駆け、ぐんぐん加速する。
 彼女の足元には、誰にも負けたくない“恋の炎”が宿っていた。

 バトンが繋がれ、次の走者へ。
 そして、ついに——

「弘弥くん、お願い!」

 俺の手にバトンが渡る。
 風が吹いた。
 全員の声が、俺の背中を押した。

 俺は、走る。

 彼女たちの“想い”を握りしめて。

 春の体育祭、運命のラストスパートへ!

(後編につづく)

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