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第一五一話 春の体育祭──駆ける想いと恋のバトン(後編)
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バトンが俺の手に渡った瞬間、世界がスローモーションになったような感覚がした。
照りつける春の陽光。
ざわめく観客席の声援。
ヒロインたちの視線が、一斉に俺を追っていた。
「いけーっ、弘弥ーっ!!!」(瑠衣)
「お兄ちゃんっ! 絶対勝ってぇぇぇ!!」(碧純)
「ふふ、勝ったら……ご褒美、考えておきますね♡」(すみれ)
「観察対象、最高速度モード突入。記録更新確認中!」(ひより)
「星々よ、風の加護を与えたまえ……!」(ユナ)
「弘弥様っ、わたくしの魂のエールを!!」(イザベラ)
全力で地面を蹴った。
腕を振り、風を切り裂き、ゴールへと駆ける。
だけど——
(……足が、重い)
明らかに相手校のアンカーは運動部らしい俊足。
ぐんぐんと差を詰められていく。
心の中で、焦りが広がった。
だけど、そのとき——
ふと、思い出す。
バトンの重さ。
ヒロインたちの声。
(これ、俺一人じゃない。みんなが繋いでくれたものだ)
気づけば、足に力が戻っていた。
目の前のゴールテープが、鮮やかに揺れていた。
——そして。
ゴール!
結果は、僅差の2位。
けれど——
「よくやったよ、弘弥!」
「お兄ちゃん、すごかった……ほんとに、かっこよかった……」
「ふふっ……やっぱり、あなたがアンカーで正解だったわね」
囲まれて、笑顔に包まれて、
俺は息を切らしながらも、確かに“勝った”気がしていた。
それは、記録じゃない。
心の中に残る、春のひとページ。
体育祭終了後、校庭には夕陽が差し込んでいた。
後片付けをしていた俺の肩に、誰かの手がぽんと置かれる。
「ねえ、ひろくん。来年もさ……」
瑠衣が少しだけ真面目な顔で言った。
「アンカー、やってよ。私たち、また走りたいからさ」
「……ああ、もちろん」
気がつけば、隣に碧純。
その視線は、まっすぐ俺に向けられていた。
「絶対、次は優勝しようね。——“私たち”で」
その言葉が、胸に刻まれた。
春の体育祭。
それは、恋と青春が全力で駆け抜けた、かけがえのない一日だった。
(つづく)
照りつける春の陽光。
ざわめく観客席の声援。
ヒロインたちの視線が、一斉に俺を追っていた。
「いけーっ、弘弥ーっ!!!」(瑠衣)
「お兄ちゃんっ! 絶対勝ってぇぇぇ!!」(碧純)
「ふふ、勝ったら……ご褒美、考えておきますね♡」(すみれ)
「観察対象、最高速度モード突入。記録更新確認中!」(ひより)
「星々よ、風の加護を与えたまえ……!」(ユナ)
「弘弥様っ、わたくしの魂のエールを!!」(イザベラ)
全力で地面を蹴った。
腕を振り、風を切り裂き、ゴールへと駆ける。
だけど——
(……足が、重い)
明らかに相手校のアンカーは運動部らしい俊足。
ぐんぐんと差を詰められていく。
心の中で、焦りが広がった。
だけど、そのとき——
ふと、思い出す。
バトンの重さ。
ヒロインたちの声。
(これ、俺一人じゃない。みんなが繋いでくれたものだ)
気づけば、足に力が戻っていた。
目の前のゴールテープが、鮮やかに揺れていた。
——そして。
ゴール!
結果は、僅差の2位。
けれど——
「よくやったよ、弘弥!」
「お兄ちゃん、すごかった……ほんとに、かっこよかった……」
「ふふっ……やっぱり、あなたがアンカーで正解だったわね」
囲まれて、笑顔に包まれて、
俺は息を切らしながらも、確かに“勝った”気がしていた。
それは、記録じゃない。
心の中に残る、春のひとページ。
体育祭終了後、校庭には夕陽が差し込んでいた。
後片付けをしていた俺の肩に、誰かの手がぽんと置かれる。
「ねえ、ひろくん。来年もさ……」
瑠衣が少しだけ真面目な顔で言った。
「アンカー、やってよ。私たち、また走りたいからさ」
「……ああ、もちろん」
気がつけば、隣に碧純。
その視線は、まっすぐ俺に向けられていた。
「絶対、次は優勝しようね。——“私たち”で」
その言葉が、胸に刻まれた。
春の体育祭。
それは、恋と青春が全力で駆け抜けた、かけがえのない一日だった。
(つづく)
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