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第二五五話 「勉強と補習と正妻選抜──赤点回避ラブコメ戦線、開幕!」
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梅雨空が続く六月末、俺たちは次なる修羅場──いや、学園の試練に立ち向かっていた。
そう、期末試験である。
「弘弥くん、今日の数学範囲……前回よりも難しめみたいね」
机に並んだプリントを丁寧に整理しながら、
隣のすみれがしっとりした声で言う。
彼女は言うまでもなく優等生。俺と同じく、テスト直前だろうが騒がず、淡々と問題集を進めるタイプだ。
「うん。だけど、ここさえ押さえれば平均+20は狙える」
「さすが……弘弥くん。そういうとこ、すごく尊敬してるわ」
その声を背中に感じながら、俺はふと後ろを振り返る。
──そこでは。
「うわっ、むずっ!? え、なにこの記号!? これ数学!? 文字数多くない!?」
「……四択にしろ……すべて四択にしてくれ……」
「き……奇問だわ。これ、もはや陰謀レベル……」
ルナ、りあ、イザベラ。
成績ピンチ三人組が、参考書に噛みつかん勢いで格闘していた。
「ってかさ、赤点取ったらうちの親から“ギャル禁止令”出るんだけど!? 絶対帰りたくないんだけど!? 弘弥、助けて!!」
「……私も、テスト失敗したら、また……“家の会社”に閉じ込められる……」
「わたくしの国では、“再教育のための留学”という名の……軟禁施設があります……」
「いや怖いからな!? みんなの実家、怖すぎない!?」
そして前方では。
「ひより、ちょっと集中して」
「……うん。集中はしてるんだけど、漢字が……全員同じ顔に見える……」
「碧純。ノートはきれいだけど、“中身”もちゃんと覚えなきゃ意味ないからね」
「わ、分かってるもん! お兄にバカにされたくないしっ」
普通成績コンビの、碧純とひよりも悪戦苦闘中。
それぞれの机の上には、色とりどりの文房具と、やたらかわいい付箋が散乱している。
◆ ◆ ◆
この日は、我が家を使った期末試験前の自主勉強会だった。
ヒロインズの一部がほぼ住んでることもあり、半ば学校公認の対策会場になっている。
「でさ~、弘弥~、あたしの英語見てくんない? ここの単語、“えらそー”って意味で合ってる?」
「それ“arrogant”。つづり逆、意味も逆」
「ギャーッ!!」
「りあ、歴史のここ。年号の順番、逆になってる」
「……えっ、……あ、本当……。……でも、こうして指摘されるの、……ちょっと好きかも……」
「危ないからな!? 今その性癖開花されても困るからな!?」
「イザベラ、この日本語、“四字熟語”って言うんだよ。“粉骨砕身”」
「ふんこつ……がいしん……。意味は、“魔力をすべて放出して戦う奥義”ですね?」
「意味違う! 違うし、イザベラはマジで信じそうで怖い!」
◆ ◆ ◆
そんな中でも、俺とすみれは黙々とペースを崩さず勉強を続けていた。
まるで保護者二人と、トラブル児童たちという図式。
「弘弥くん、これで全員、なんとか平均点は超えられそうかしら?」
「……うん、ギリギリだけど。ルナが夜に集中できれば、ワンチャンいける」
「じゃあ、私たち、寝る前に“個別補習”ね?」
「“個別”って言い方……ちょっと誤解生むぞ……」
「……わたしは誤解させてもいいけど?」
「え、すみれさん???」
ドキッとする一言がさらっと出てくるから、この人ほんと怖い。
すみれは何もなかったようにノートをめくっているが、耳はほんのり赤い。
◆ ◆ ◆
そんな中、リビングの隅では──
「……集中の儀……集中の儀……くすぐり呪文は封印……」
ひよりが自作のおまじないを書いた紙を貼りながら、机に頭をつけていた。
「ひより、呪術に頼るな! まず参考書読め!!」
「でも、弘弥の“集中モード”は魔力高まってる感ある……観察したい……」
「やめろォォォ!!!」
ルナはルナで、参考書に「ギャル式☆語呂合わせ」を落書きしていた。
「“胃・小・大・直・肛”って、“いしょーだいちょーこー”でリズムにしたら覚えやすくない!? イケるでしょ、弘弥っ!」
「腸の順番をクラブリリックにしないでくれ!!!」
イザベラは「武士の魂・百人一首」を筆でなぞっていたし、
りあは“暗黒の黒ノート”とかいう何かを作っていた。
もう全員、自由すぎる。
──だが、だからこそ、楽しい。
騒がしくて、笑い声があって、でもちゃんと支え合ってて。
……これが、俺の“青春”だ。
◆ ◆ ◆
夜になった。
みんな少しずつ静かになり、ノートをまとめたり、ストレッチを始めたりしている。
そして、俺はふと立ち上がって言った。
「ラストスパート。明日は模擬テストやろう」
「「「「うぇぇぇぇええええ!?!?」」」」
試験当日までは、あと四日──
王子と姫たちの、赤点をかけた真剣勝負は、これからが本番である。
そう、期末試験である。
「弘弥くん、今日の数学範囲……前回よりも難しめみたいね」
机に並んだプリントを丁寧に整理しながら、
隣のすみれがしっとりした声で言う。
彼女は言うまでもなく優等生。俺と同じく、テスト直前だろうが騒がず、淡々と問題集を進めるタイプだ。
「うん。だけど、ここさえ押さえれば平均+20は狙える」
「さすが……弘弥くん。そういうとこ、すごく尊敬してるわ」
その声を背中に感じながら、俺はふと後ろを振り返る。
──そこでは。
「うわっ、むずっ!? え、なにこの記号!? これ数学!? 文字数多くない!?」
「……四択にしろ……すべて四択にしてくれ……」
「き……奇問だわ。これ、もはや陰謀レベル……」
ルナ、りあ、イザベラ。
成績ピンチ三人組が、参考書に噛みつかん勢いで格闘していた。
「ってかさ、赤点取ったらうちの親から“ギャル禁止令”出るんだけど!? 絶対帰りたくないんだけど!? 弘弥、助けて!!」
「……私も、テスト失敗したら、また……“家の会社”に閉じ込められる……」
「わたくしの国では、“再教育のための留学”という名の……軟禁施設があります……」
「いや怖いからな!? みんなの実家、怖すぎない!?」
そして前方では。
「ひより、ちょっと集中して」
「……うん。集中はしてるんだけど、漢字が……全員同じ顔に見える……」
「碧純。ノートはきれいだけど、“中身”もちゃんと覚えなきゃ意味ないからね」
「わ、分かってるもん! お兄にバカにされたくないしっ」
普通成績コンビの、碧純とひよりも悪戦苦闘中。
それぞれの机の上には、色とりどりの文房具と、やたらかわいい付箋が散乱している。
◆ ◆ ◆
この日は、我が家を使った期末試験前の自主勉強会だった。
ヒロインズの一部がほぼ住んでることもあり、半ば学校公認の対策会場になっている。
「でさ~、弘弥~、あたしの英語見てくんない? ここの単語、“えらそー”って意味で合ってる?」
「それ“arrogant”。つづり逆、意味も逆」
「ギャーッ!!」
「りあ、歴史のここ。年号の順番、逆になってる」
「……えっ、……あ、本当……。……でも、こうして指摘されるの、……ちょっと好きかも……」
「危ないからな!? 今その性癖開花されても困るからな!?」
「イザベラ、この日本語、“四字熟語”って言うんだよ。“粉骨砕身”」
「ふんこつ……がいしん……。意味は、“魔力をすべて放出して戦う奥義”ですね?」
「意味違う! 違うし、イザベラはマジで信じそうで怖い!」
◆ ◆ ◆
そんな中でも、俺とすみれは黙々とペースを崩さず勉強を続けていた。
まるで保護者二人と、トラブル児童たちという図式。
「弘弥くん、これで全員、なんとか平均点は超えられそうかしら?」
「……うん、ギリギリだけど。ルナが夜に集中できれば、ワンチャンいける」
「じゃあ、私たち、寝る前に“個別補習”ね?」
「“個別”って言い方……ちょっと誤解生むぞ……」
「……わたしは誤解させてもいいけど?」
「え、すみれさん???」
ドキッとする一言がさらっと出てくるから、この人ほんと怖い。
すみれは何もなかったようにノートをめくっているが、耳はほんのり赤い。
◆ ◆ ◆
そんな中、リビングの隅では──
「……集中の儀……集中の儀……くすぐり呪文は封印……」
ひよりが自作のおまじないを書いた紙を貼りながら、机に頭をつけていた。
「ひより、呪術に頼るな! まず参考書読め!!」
「でも、弘弥の“集中モード”は魔力高まってる感ある……観察したい……」
「やめろォォォ!!!」
ルナはルナで、参考書に「ギャル式☆語呂合わせ」を落書きしていた。
「“胃・小・大・直・肛”って、“いしょーだいちょーこー”でリズムにしたら覚えやすくない!? イケるでしょ、弘弥っ!」
「腸の順番をクラブリリックにしないでくれ!!!」
イザベラは「武士の魂・百人一首」を筆でなぞっていたし、
りあは“暗黒の黒ノート”とかいう何かを作っていた。
もう全員、自由すぎる。
──だが、だからこそ、楽しい。
騒がしくて、笑い声があって、でもちゃんと支え合ってて。
……これが、俺の“青春”だ。
◆ ◆ ◆
夜になった。
みんな少しずつ静かになり、ノートをまとめたり、ストレッチを始めたりしている。
そして、俺はふと立ち上がって言った。
「ラストスパート。明日は模擬テストやろう」
「「「「うぇぇぇぇええええ!?!?」」」」
試験当日までは、あと四日──
王子と姫たちの、赤点をかけた真剣勝負は、これからが本番である。
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