同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第二六七話 「戻る場所、日常の机──アニメになっても変わらないもの」

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夏の小旅行が終わり、俺たちはようやく自宅へと戻ってきた。

玄関を開けた瞬間、涼しい空気と、
どこかホッとする家の匂いが出迎えてくれた。

「やっぱ……落ち着くな、ここ」

荷解きもそこそこに、俺は自室へ向かい、
久々に、自分のデスクチェアに腰を下ろした。

パソコンの電源を入れ、愛用のキーボードを叩く。

画面に映るのは、いつもの執筆ウィンドウ。

「さて、続きを書くか」

キーボードの音が心地よく響く。

──ここが、俺の“戦場”だ。

◆ ◆ ◆

しばらくすると、リビングにいたヒロインたちが不思議そうに首をかしげ始めた。

「ねぇ……アニメ化って、もっと忙しいもんじゃないの?」

「弘弥くん、意外と普通に家にいるよね」

「アニメ作業で、徹夜とか、声優チェックとか、スタジオに通ってると思ってた」

「うん、確かに忙しいイメージだった……」

「お兄の作業量、あんま変わってなくない……?」

そんな疑問を抱えた彼女たちが、部屋を覗きに来る。

「……って、ほんとにライトノベル書いてるー!?」

「アニメ、もう進んでるはずだよね!? 弘弥って“原作”なんだよね!? なにしてるの!?」

◆ ◆ ◆

俺は一度手を止めて、椅子をくるりと回し、みんなの方を見る。

「まあ……実は、“原作”ではあるけど、今回のアニメ企画は、
原案提供という立場にしてもらったんだ」

「え?」

「どういうこと?」

「原案っていうのは、物語の大枠と世界観、キャラクター設定とか、
物語の“芯”になる部分を提供する立場のこと。脚本や演出、コンテや監修は、
基本的にアニメスタッフが担当してくれる」

「つまり、アニメ化に際しては“学業優先”って条件で、
一歩引いた立場で関わってるってことかしら?」

「そういうこと。監修とか確認は時々するけど、
日々のスケジュールはあんまり変わってない。今はこうしてラノベの執筆がメイン」

「……へぇ。ちょっと安心したかも」

「でも……すごいなぁ。アニメ原案って、それってすごく“信頼されてる”ってことだよね」

「そりゃ、私たちの物語なんだからね」

「うふふ、じゃあ、原案提供者に“直接取材”してもいい?」

「ちょ、待って! 今から原案者狩りみたいな目で見るのやめて!?」

◆ ◆ ◆

パソコンの画面に戻ると、
物語のキャラたちが、また俺の頭の中で生き始める。

──ここが、俺の原点。

たとえアニメになっても、
原作を書き続ける限り、俺はこの場所に戻ってくるんだ。
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