同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

第二七二話 「壊れたエアコンと汗だくヒロインズ──夏の部屋は、灼熱地獄」

朝。

いつもと同じように目を覚ました俺は、
まず一言目にこう叫んだ。

「暑っっっ……！！」

窓は閉まっている。
扇風機は止まっている。

そして──

「……あれ？ エアコンが……反応しない……？」

リモコンを何度押しても、
“ピッ”という音がまったくしない。

俺は目を見開いて、静かに呟いた。

「……死んだか……」

◆　◆　◆

その後、地獄のような一日が始まった。

「ひろやぁ～～～、し、死ぬぅ～～～～～！！」

「タオル……タオルぅ……私、干からびる……」

「室温、32.6℃……扇風機一台では分散効率不足……」

「私の国の夏より……キツイです……」

「お兄、氷枕追加は！？ まだ冷えてないの！？ ……うう、暑い……」

「……っ、制服……限界……上だけ脱ぐ……」

部屋の隅では、

すみれがブラウスを脱いでキャミソール姿に。
ルナは元々露出多いので逆にいつも通り。
碧純はタンクトップ＋ショーパンで汗だく。

ひよりはなぜか保冷剤を脇に挟みながら記録中。
りあは黙ってアイスノンを抱きしめていた。
イザベラはドレスの下を捲って足を冷やしていた。

……そして、そこには汗と混じったそれぞれの“体臭”が、ほんのりと漂っていた。

石けんのようなやさしい香りが、汗に溶けてほのかに甘く変わる。
ラベンダー系の香りは熱気の中でふわっと広がり、
甘酸っぱい少女の香りが、部屋の隅で交錯する。

不快ではない。
でも、やけに“生っぽい”。

それは今、この夏を本当に一緒に生きている──
そんな実感に近かった。

「うぉおお……なんでこんな日に限って……！」

「……エアコン、買い替えしかないか……」

◆　◆　◆

そのとき、ピンポーンとチャイムが鳴った。

「こんにちは～！ エアコン点検の依頼、こちらですか～？」

「来た！！ 救世主！！」

俺は、汗で前髪がぺったり張り付いたヒロインたちの中を抜け、
まさに“命を預ける”覚悟で業者に頭を下げるのだった。