同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第二八〇話 「セミと唐揚げと、夏の味──そして地獄の宴」

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ジジジジジジ……ッ!!

朝から、けたたましく響くセミの声。

「うるさいっ!!!」

リビングで碧純が、窓の外のセミに向かって怒鳴った。

「この音で目が覚めるとか、拷問でしょ!? お兄、なんとかしてよ!」

「俺に言われても……」

「ちょっと網取ってくるわ」
ルナが気合い十分で立ち上がる。

「セミ、解剖してもいい?」
ひよりが危ない目をしている。

「……美術で描きたい」
りあがスケッチブックを構える。

「弘弥くん、逃がしたらダメですわよ? 捕獲は“共同作業”なのですから♡」
イザベラがなぜか張り切っている。

◆ ◆ ◆

数十分後──

「つ、捕まえた……っ!!」

すみれが見事に一匹のセミを網で捉えた瞬間、
家のチャイムが鳴った。

「おはよ~、来ちゃった♪」

現れたのは、浴衣姿から一転、今日は私服の看護師──篠宮みつきだった。

「おっ、セミ捕まえてんじゃ~ん。懐かしいなぁ……昔、唐揚げにして食べたよね?」

「「「「「…………えっ?」」」」」

「え? 唐揚げ? セミを?」

「そうそう。夏の思い出だよ~。ビールと合うのよ、意外と」

◆ ◆ ◆

「……唐揚げにしてみる?」

「…………お兄が昔食べたって聞いたら、ちょっと……むかついた」

「一回くらい、体験として……ね?」

「観察対象に食べさせる価値あり」

「私たち、いつだって弘弥のために全力よ♡」

その結果──

ヒロイン全員、セミ唐揚げ調理班と化した。

揚げ油。
小麦粉。
塩コショウ。

ジュワァァァァァ……ッ!!

「うわっ、ほんとに揚げてる……!」
「匂いは、悪くない……かも?」
「昆虫ってタンパク質多いんですよね……」

「……じゃあ、一口」

俺が串に刺さったセミを口元に近づけたそのとき──

「いっただきまーすっ!」

ルナが勢いよくかぶりついた。

「うわっ!? サクサクしてるっ!? ……ん……!? ……うわあああああああ!!!」

その叫びを合図に、

全員、地獄に突入した。

「なんか、羽が……口の中で、カシャ……!!」

「お兄、羽、歯に挟まってる!! やめてえええ!!」

「ひろや……私たち、どうしてこんなことを……」

「うっ……私は、もう二度と昆虫を食べない……」

「ぴ、ぴぎゃああああ!!!」

◆ ◆ ◆

その横で、缶ビール片手に笑うみつきがいた。

「ははっ……今年の蝉も、最高ねぇ~シャリシャリシャリ」
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