同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第二九一話 「出発!汗と期待と山の空気──筑波山登山編・第一章」

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夏のある日。

「登山? ……筑波山?」

そんな言葉がヒロインたちの口から出たのは、
朝のリビングで冷やし中華をすすっていた時だった。

「うん。せっかく夏だし、自然の中で汗を流すのも悪くないかなって」

俺がそう口にすると、
ヒロインたちは一瞬沈黙──
そして、驚きと戸惑いと、妙な期待が入り混じった顔を見せた。

「登山って……まさか、あの、ガチなやつ?」

「筑波山って、アレでしょ? 女体山とか男体山とかって名前の……」

「観察対象が登山希望……心肺機能、耐性確認の好機」

「うふふ、山登り……弘弥様と頂上でお弁当……ロマンティックですわ」

「お兄、どうせ途中でバテるでしょ。私が引っ張ってってあげるから!」

そしてこうして、
俺たちの“夏の筑波山登山”が始まった。

◆ ◆ ◆

当日──朝6時。

待ち合わせ場所は、つくばエクスプレスのつくば駅前。

山ガール風のスタイルに身を包んだヒロインたちは、
それぞれに個性あふれる登山ファッションで登場した。

すみれは機能性重視のアウトドアブランド。
ルナは大胆なショートパンツにスポブラ姿(※目立ちすぎ)。
碧純は完璧なリュック&帽子装備、だがリュックの中身は不明。
ひよりはデータ重視の最新装備と心拍計。
りあは真っ黒なパーカーとレギンス。
イザベラはなぜかレース付きのトレッキングワンピース。

そして俺は──

「……なんで全員、俺より登山ガチなの!?」

◆ ◆ ◆

車で移動し、筑波山神社の登山口に到着。

「いよいよ、登山開始……!」

俺たちは男体山コースから女体山山頂を目指す王道ルートへ。

最初は笑っていた。

「うわ~、森の香り! 空気おいし~~!」

「ひろやくん、写真撮ろう! 登山記録!」

「まだ平坦。こんなの余裕~~~」

だが、10分後──

「はあっ……はあっ……坂……急じゃね……?」

「ちょ、汗ヤバい……服、貼りつく……」

「足……重い……」

──登山は、甘くなかった。

◆ ◆ ◆

だが、その汗も、会話も、ぜんぶ含めて。

この山道を、一緒に進む時間こそが──
俺たちの“物語の一幕”になっていく。

「ほら、弘弥。手、貸すよ」

「お兄、顔赤い。水、飲んで」

「……この先に、ベンチある。休憩、提案」

「弘弥様、わたくしの手拭いを……どうぞ♡」

それぞれの想いが、登山道の上で重なっていく。

筑波山は、まだ始まったばかりだ。
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