同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三一九話 「三竦みの修羅場──中二病 VS ヤンデレ VS ギャル、そして俺は逃げたい」

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 ──放課後、屋上。

 空は夕焼け。
 風が髪を揺らし、三人のヒロインが対峙していた。

 中心には俺──真壁弘弥(人間)。
 その前に立つのは──

「弘弥お兄ちゃんは、私のものなんだよ」

 微笑をたたえるあゆむ(ヤンデレ)。

「誰よりも先に弘弥の心に住んでいたのは、わたしなのよ?」

 低く囁くりあ(闇属性ヤンデレ)。

「はぁ~!? どっちも怖すぎ! 弘弥はあたしの彼氏候補なんだけどぉ!? 今日キメたらお泊まりでしょ!?」

 キレ気味なルナ(ギャル属性・恋愛暴走機関車)。

(──いや、全員落ち着け。まずは深呼吸しような)

 俺のツッコミは、風に消えた。

 ◆ ◆ ◆

「弘弥お兄ちゃんが誰を選ぶかって? そんなの聞かなくても、わかってるよね?」

 あゆむが、ゆっくり歩み寄る。

「じゃあ、その首筋の痕……あたしの歯型が残ってるか見せて?」

「待って。確認するのはわたしの左手首。“弘弥”って刻んであるから」

「何その痛い自己主張!?」

「うるさい! わたしのほうが先に狙ってたの!」

「いやいや、先に口説いたのあたしだから!」

「いや、わたしは記録しながら恋してたから!!」

「記録関係ないだろ!!?」

 口論はエスカレートし、遂にはルナが脱ぎ出した。

「だったらボディで勝負だよね!? ギャルの戦は肉弾戦だし!」

「やめろルナァ! そういうのは地上波で放送できないから!」

「放送とか関係ないの! 今ここでヒロインNo.1決めるの!」

「ならば私も……!」

 瑠衣がいつの間にか現れ、校舎の影から飛び出す。

「全属性、排除せし漆黒の魔導剣よ──“くすぐりの呪縛”ッ!!」

「お前も来たんかい!!」

 ◆ ◆ ◆

 ──屋上、完全にバトルロワイヤル。

 ヤンデレ、ギャル、中二病の三属性が火花を散らし、
 俺は……ひたすらフェンス際で縮こまっていた。

「ど、どうすんのこれ……逃げ場ない……」

 それでも俺は叫んだ。

「おまえらあぁぁあっ!! 俺は一人でラノベを書いていたいだけなんだよぉぉぉ!!!」

 しかし──

「弘弥お兄ちゃんが選ばなくても、私が選ぶから」

「消えてほしい人、リストアップ済みだし」

「契約は完了している。我が魂と君のペンは一つになる運命!」

(──終わった。ラノベも、人生も、俺の股間も──)

 そのとき、校舎のスピーカーが鳴った。

『こらぁぁあああ!! なにやってるのアンタたちぃぃぃ!!!』

 生活指導・黒沢先生が激怒モードで登場。

「屋上で決闘!? なに!? 本気の愛のバトル!? ……青春かッッッ!!!」

 一瞬、全員が硬直する。

 その隙に、俺は──

 そっと体育館裏に逃げた。

 ◆ ◆ ◆

 ──そして、誰もいない講堂のステージ裏。

 ひとり床に座り込み、俺は息を吐いた。

「誰か……まともな子、いないかな……」

 静寂の中、背後で扉が開いた。

「──それなら、私が来たよ」

 現れたのは──新キャラの影。

 その声はどこか懐かしく、でも危うい響き。

(……また増えるのかよ……)
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