同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三三九話 「つくばエクスプレス地獄行き──帰り道、揺れる地雷と誤解と修羅場と」

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 東京、夜22時40分。
 アニメ完成試写会と、その後の“地雷打ち上げ”を終えた俺たちは、
 秋葉原駅から**つくばエクスプレス(TX)**に乗り込んだ。

 行きの快適な小旅行はどこへやら。
 帰りの車内は――

「静かなる修羅場」だった。

 ◆ ◆ ◆

 発車と同時に、車両内に広がる沈黙。
 そして、ついに――爆発した。

「弘弥くん、今日の試写会……すっごく良かったね。
 でもさ、“あの子”、可愛かったね」

 静かに口を開いたのは、すみれ。

「えっ、どの子……?」

「“先生って若いんですね~!”って、ニコニコしてた声優さんのことだよ。
 あの子、名前なんだっけ。“天羽しの”ちゃん、だっけ?」

「ぐふぅっ……!」

 横であゆむが囁く。

「お兄ちゃん、しのさんの写真、フォルダに入れてるでしょ……。
 “推し”って……あれ、ヒロインたちはどう思えばいいのかな?」

「いや、それは! 違っ――」

「“パンツの描写”に“原作リスペクト”って、どういうことかしら?」

 りあの声が重低音で響く。

「リスペクトの方向性が、“変態的だった”って話?」

 ひよりは手帳に「尊敬=エロス理論(真壁仮説)」と書いていた。

「ま、まぁまぁ、今日はテンション上がってたし!」

 ルナが笑ってフォロー……したと思ったら、

「で? テンション上がったついでに“しのちゃん”に手出すのはナシだからね?」

「出してないって!!なんでそうなる!!」

 ◆ ◆ ◆

 TXの揺れは、徐々に激しくなる。
 が、それ以上に揺れていたのは――

 俺のメンタルだった。

(逃げ場がない……!! 車両内、全方位からの本音ラッシュ!!)

 瑠衣は車窓を見ながら詠唱する。

「……嫉妬と疑念の魔力、高まりすぎて風紀が乱れてる……。
 “夢精”の比じゃない破壊力……!」

「その例えやめてぇぇ!!」

 ◆ ◆ ◆

 守谷駅を過ぎたあたりで、ついにすみれが本題を切り出す。

「ねぇ、弘弥くん」

「はい……」

「私たち、“ヒロイン”としての立ち位置、
 “アニメの中”と“現実の中”で、どっちが大事なんだろうね?」

「……え?」

「“誰が正妻か”って、演出上の役割じゃなくて、
 現実でのあなたの気持ちで決まるんだよ?」

(なにこれ……めっちゃ核心きたぁぁあああ!!!)

「……じゃあさ、今の本命って、誰なの?」

 静かに、確かに。

 ルナがそう訊いた瞬間――

 TXの車内に沈黙が広がった。

(その質問……乗客全員が聞こえる音量で投げないで……!)

 ◆ ◆ ◆

 結局、答えを出せぬまま、TXは終点・つくばへ。

 俺はぐったりと改札を出たところで、
 ふと、誰かの手にそっと触れられた。

 すみれだった。

「ごめんね、ちょっと意地悪だった。
 でも……弘弥くんが“誰か一人”を選ぶ未来が、私は怖いの」

「……俺も、怖いよ」

 だけど――それでも。

「でも、お前らと一緒にいられる今が……すげー大事なんだ」

 その言葉に、みんなの表情が少しだけ和らいだ。

「……じゃあ、帰ろっか。布団、干してあったっけ?」

「干したのは、“あんたの今朝のやつ”だからね!!」
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