348 / 630
第三三九話 「つくばエクスプレス地獄行き──帰り道、揺れる地雷と誤解と修羅場と」
しおりを挟む
東京、夜22時40分。
アニメ完成試写会と、その後の“地雷打ち上げ”を終えた俺たちは、
秋葉原駅から**つくばエクスプレス(TX)**に乗り込んだ。
行きの快適な小旅行はどこへやら。
帰りの車内は――
「静かなる修羅場」だった。
◆ ◆ ◆
発車と同時に、車両内に広がる沈黙。
そして、ついに――爆発した。
「弘弥くん、今日の試写会……すっごく良かったね。
でもさ、“あの子”、可愛かったね」
静かに口を開いたのは、すみれ。
「えっ、どの子……?」
「“先生って若いんですね~!”って、ニコニコしてた声優さんのことだよ。
あの子、名前なんだっけ。“天羽しの”ちゃん、だっけ?」
「ぐふぅっ……!」
横であゆむが囁く。
「お兄ちゃん、しのさんの写真、フォルダに入れてるでしょ……。
“推し”って……あれ、ヒロインたちはどう思えばいいのかな?」
「いや、それは! 違っ――」
「“パンツの描写”に“原作リスペクト”って、どういうことかしら?」
りあの声が重低音で響く。
「リスペクトの方向性が、“変態的だった”って話?」
ひよりは手帳に「尊敬=エロス理論(真壁仮説)」と書いていた。
「ま、まぁまぁ、今日はテンション上がってたし!」
ルナが笑ってフォロー……したと思ったら、
「で? テンション上がったついでに“しのちゃん”に手出すのはナシだからね?」
「出してないって!!なんでそうなる!!」
◆ ◆ ◆
TXの揺れは、徐々に激しくなる。
が、それ以上に揺れていたのは――
俺のメンタルだった。
(逃げ場がない……!! 車両内、全方位からの本音ラッシュ!!)
瑠衣は車窓を見ながら詠唱する。
「……嫉妬と疑念の魔力、高まりすぎて風紀が乱れてる……。
“夢精”の比じゃない破壊力……!」
「その例えやめてぇぇ!!」
◆ ◆ ◆
守谷駅を過ぎたあたりで、ついにすみれが本題を切り出す。
「ねぇ、弘弥くん」
「はい……」
「私たち、“ヒロイン”としての立ち位置、
“アニメの中”と“現実の中”で、どっちが大事なんだろうね?」
「……え?」
「“誰が正妻か”って、演出上の役割じゃなくて、
現実でのあなたの気持ちで決まるんだよ?」
(なにこれ……めっちゃ核心きたぁぁあああ!!!)
「……じゃあさ、今の本命って、誰なの?」
静かに、確かに。
ルナがそう訊いた瞬間――
TXの車内に沈黙が広がった。
(その質問……乗客全員が聞こえる音量で投げないで……!)
◆ ◆ ◆
結局、答えを出せぬまま、TXは終点・つくばへ。
俺はぐったりと改札を出たところで、
ふと、誰かの手にそっと触れられた。
すみれだった。
「ごめんね、ちょっと意地悪だった。
でも……弘弥くんが“誰か一人”を選ぶ未来が、私は怖いの」
「……俺も、怖いよ」
だけど――それでも。
「でも、お前らと一緒にいられる今が……すげー大事なんだ」
その言葉に、みんなの表情が少しだけ和らいだ。
「……じゃあ、帰ろっか。布団、干してあったっけ?」
「干したのは、“あんたの今朝のやつ”だからね!!」
アニメ完成試写会と、その後の“地雷打ち上げ”を終えた俺たちは、
秋葉原駅から**つくばエクスプレス(TX)**に乗り込んだ。
行きの快適な小旅行はどこへやら。
帰りの車内は――
「静かなる修羅場」だった。
◆ ◆ ◆
発車と同時に、車両内に広がる沈黙。
そして、ついに――爆発した。
「弘弥くん、今日の試写会……すっごく良かったね。
でもさ、“あの子”、可愛かったね」
静かに口を開いたのは、すみれ。
「えっ、どの子……?」
「“先生って若いんですね~!”って、ニコニコしてた声優さんのことだよ。
あの子、名前なんだっけ。“天羽しの”ちゃん、だっけ?」
「ぐふぅっ……!」
横であゆむが囁く。
「お兄ちゃん、しのさんの写真、フォルダに入れてるでしょ……。
“推し”って……あれ、ヒロインたちはどう思えばいいのかな?」
「いや、それは! 違っ――」
「“パンツの描写”に“原作リスペクト”って、どういうことかしら?」
りあの声が重低音で響く。
「リスペクトの方向性が、“変態的だった”って話?」
ひよりは手帳に「尊敬=エロス理論(真壁仮説)」と書いていた。
「ま、まぁまぁ、今日はテンション上がってたし!」
ルナが笑ってフォロー……したと思ったら、
「で? テンション上がったついでに“しのちゃん”に手出すのはナシだからね?」
「出してないって!!なんでそうなる!!」
◆ ◆ ◆
TXの揺れは、徐々に激しくなる。
が、それ以上に揺れていたのは――
俺のメンタルだった。
(逃げ場がない……!! 車両内、全方位からの本音ラッシュ!!)
瑠衣は車窓を見ながら詠唱する。
「……嫉妬と疑念の魔力、高まりすぎて風紀が乱れてる……。
“夢精”の比じゃない破壊力……!」
「その例えやめてぇぇ!!」
◆ ◆ ◆
守谷駅を過ぎたあたりで、ついにすみれが本題を切り出す。
「ねぇ、弘弥くん」
「はい……」
「私たち、“ヒロイン”としての立ち位置、
“アニメの中”と“現実の中”で、どっちが大事なんだろうね?」
「……え?」
「“誰が正妻か”って、演出上の役割じゃなくて、
現実でのあなたの気持ちで決まるんだよ?」
(なにこれ……めっちゃ核心きたぁぁあああ!!!)
「……じゃあさ、今の本命って、誰なの?」
静かに、確かに。
ルナがそう訊いた瞬間――
TXの車内に沈黙が広がった。
(その質問……乗客全員が聞こえる音量で投げないで……!)
◆ ◆ ◆
結局、答えを出せぬまま、TXは終点・つくばへ。
俺はぐったりと改札を出たところで、
ふと、誰かの手にそっと触れられた。
すみれだった。
「ごめんね、ちょっと意地悪だった。
でも……弘弥くんが“誰か一人”を選ぶ未来が、私は怖いの」
「……俺も、怖いよ」
だけど――それでも。
「でも、お前らと一緒にいられる今が……すげー大事なんだ」
その言葉に、みんなの表情が少しだけ和らいだ。
「……じゃあ、帰ろっか。布団、干してあったっけ?」
「干したのは、“あんたの今朝のやつ”だからね!!」
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる