同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三三八話 「編集者&声優との打ち上げ──ヒロインたちの沈黙と嫉妬」

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 試写会が終わり、拍手とサインと握手と――地獄のような囲み取材も終えて。

 その夜。
 秋葉原から少し離れた、落ち着いた和風個室居酒屋にて――
 編集者・久遠美月と、声優・天羽しのさんと、俺・真壁弘弥、
 そしてなぜか当然のようにヒロイン全員集合していた。

(……打ち上げって、普通こうなるのか……?)

「ま~、真壁先生もやっと“世間に見つかる時”が来たわけですね~」

 久遠美月編集が、なぜかジュースのグラスで堂々と乾杯している。
 見た目は小学生。だが中身はプロ編集者、32歳(離婚調停中)。

「うん、なんか……まだ実感湧かないけどさ」

「えへへっ、それでも先生、嬉しそう~!」

 と、隣でにこにこ笑っているのは――

「天羽しのです! 真壁先生、本当に今日はありがとうございました!」

(目の前に“俺の推し”が座ってるという現実が、まだ消化できない)

 ◆ ◆ ◆

「しのちゃん、どう? アフレコ終えて、改めて完成映像見て」

「すっごく満足してます! ただ……ひとつだけ気になるのは」

 しのさんがチラッと、俺の方を見て――

「“主人公が夢精するシーン”、あれって……原作にもあるんですよね?」

 \カシャン/(おしぼりを落とす音)

「ちょっと待って!? なんでその話題!?」

「え? でも収録時、監督が“原作リスペクトだから”って言ってたから……」

「どこのシーンだよそれ!? 漫画化にもなってないのに、どこ情報!?!?」

 ◆ ◆ ◆

 そして、周囲の“空気”が変わった。

「……弘弥。夢精シーン、そんなに大事だったの?」

 すみれの声が低い。

「“原作リスペクト”って、どういう意味なんだろうねぇ~?」

 ルナがニヤリと笑う。

「わたしたち……取材された覚え、ないけど?」

 りあがテーブル越しに、グラスを持ったまま俺を見つめている。

「観察データ、漏洩……?」

 ひよりのノートが開かれる。

「“精液の軌道”まで再現されてたらアウトね」

 瑠衣が唐突に呪文詠唱の準備に入る。

(やばい……会話の中身にギャップがありすぎる!!)

 ◆ ◆ ◆

「えーと、あの、私はすごく楽しく演じさせていただきました!」

 しのさんが空気を読まず(というか無垢に)笑顔で言った。

「それに……弘弥先生が“ヒロインたちをすごく大事に描いてる”の、すごく伝わりました。
 収録中、ちょっと嫉妬しちゃうくらい……」

 \ゴトン/(グラスを置く音)

 ヒロイン全員:「「「へぇ~~~~~~~~?」」」

(終わったぁぁぁぁぁぁああああ!!!)

 ◆ ◆ ◆

 結局、打ち上げの後半は――

 ・編集・久遠美月「この地雷原、どう編集すればいいのかしら」
 ・声優・天羽しの「先生ってモテるんですね♡」
 ・ヒロインズ「“元ヒロイン”にされる前に、潰す」

 という三すくみ状態になり、
 俺はひたすら低姿勢で、炭酸水をあおるしかなかった。

(たぶん……この打ち上げ、俺の“社会的初夜”だった気がする……)
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