同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三六四話 「推しが身近にいすぎる件──“ことねVSヒロイン連合”ラブ抗争勃発!」

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 ──火曜日、昼休み。
 教室の窓際。

「はぁ……平和な昼が恋しい……」

 唐突なVTuber正体バレ騒動、未遂の告白、配信炎上寸前のスパチャ祭り。
 俺のメンタルはもうそろそろ限界を迎えていた。

「……弘弥くん、ちょっといい?」

 すみれが、お茶を入れながら静かに言った。

「この場で、“誰が一番の推しか”はっきりさせましょう」

「……はい?」

 ◆ ◆ ◆

「推し!?推しって私でしょ!?」

「いや、わたしでしょ!? 弘弥の夢精3連記録、誰が真っ先に気づいたと思ってんの!?」

「どっちが“ことねちゃん”より魅力的か、ここで決めるしかない!」

「“夢精頻度を下げられるヒロイン”って、なに基準だよ!!?」

「わたしは弘弥のために毎朝バランスの取れた朝食を作ってるのよ!」

「わたしは、バランスの取れた背徳感を与えてるのよ!」

「えっ、それ私もやりたい」

「参戦表明が軽い!!!」

 ◆ ◆ ◆

「で、弘弥。どうなの?」

「どの娘が一番“夢に出てきてる”の?」

「何そのラノベランキング方式!!」

「言って!言わなきゃ未来に進めないの!」

「いや進まなくていい!むしろ後退してくれ今は!!」

「ちなみに、“夢精夢出演率”はわたしが一番高いはずよ」

「そういう分析いらないです!!!」

 ◆ ◆ ◆

 ことねはと言えば、机の上で微笑んでいた。

「私……リアルの恋愛って、こんなに熱量あるんだって思いました」

「うん。めちゃくちゃあるよ。“弘弥の周囲”はな」

「でも、負けません。
 VTuberだって、現実の女の子だって、
 “弘弥くんの本命”になっていいと思うから」

(だめだ! この戦、誰も退かないぞ!!)

 ◆ ◆ ◆

「ごめん、俺……トイレ!」

 そう叫ぶや否や、俺は教室を飛び出した。

 廊下を駆け抜け、階段を下り、
 息を切らして、ようやく屋上裏の物陰にたどり着いた。

「やっと……静かだ……」

 その瞬間――

「……あら? お兄ちゃん……?」

 聞き覚えのある、でもどこか懐かしい声。

 振り向くと、そこにいたのは――

 セミロングの黒髪、涼しげな瞳、制服のスカートをふわりと揺らした、転校生の後輩女子。

「ひさしぶり、弘弥お兄ちゃん。……わたし、覚えてる?」

 その笑顔は、夏の夢に出てきたあの“幼い影”の――正体だった。
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