同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三六五話 「“夢”の中で出会ったあの子──再会と波紋」

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 ──屋上裏。
 コンクリートの静寂の中に、その声は確かに響いた。

「ひさしぶり、弘弥お兄ちゃん。……わたし、覚えてる?」

 その一言で、時間が止まった気がした。

 黒髪のセミロング。透き通るような瞳。
 制服のリボンを指でつまみながら、彼女は笑っていた。

「……え、誰……? いや、まって、え、まさか……!」

「やっと思い出してくれた?」

 ふわり、と夏の潮風の匂いが鼻をかすめた――ような気がした。

 ◆ ◆ ◆

 そうだ。

 幼い頃、夏の海辺で――
 誰とも分からない“男の子のような子”と一緒に遊んでいた記憶。

 砂浜に落書きをして、
 流木を船にして、
 夜に「将来は一緒に○○しようね」なんて、甘酸っぱすぎる約束までして……

「えっ……あの時の……“男の子”って、君……なのか?」

「男の子じゃないもん。最初から、わたしは“女の子”だったよ」

「…………あ゛ああああああああ!!!!」

(脳内で過去記憶が全フルカラーで流れ出した!)

 ◆ ◆ ◆

「転校してきたの、昨日だよ。
 でも弘弥お兄ちゃん、まっっったく気づかないから、ちょっとがっかりだった」

「いや!俺の記憶力が悪いのが悪いんじゃなくて!!
 あのときより君、めっちゃ美少女になってるから!!」

「……じゃあ、“可愛い”ってこと?」

「う゛っ……か、可愛い……です……はい……」

「うふふっ」

 屋上裏の静寂に、彼女の笑い声が風のように響いた。

 ◆ ◆ ◆

「名前……あゆむ、だっけ? “あゆむ”ちゃん」

「正確には“篠宮あゆむ”。みつきお姉ちゃんの妹、って言った方が分かりやすい?」

「いや、もう十分混乱してるから!!!」

(“看護師みつきの妹”ってだけでも爆弾なのに、
 俺の幼少期の“海の約束相手”まで兼任してんの!?!?)

 ◆ ◆ ◆

「弘弥お兄ちゃん、私ね……中学のときからずっと探してたんだよ」

「“夢の中に出てくる海辺の男の子”。
 あの約束、本気で守るつもりだったから」

「わたし……今度こそ、離れないよ。
 夢の続き、今からちゃんと始めたいの」

(やばい……この子、マジだ。ガチ勢だ……!)

 そして彼女は、いたずらっぽく微笑んだ。

「“他の女の子”ばっかり見てると……わたし、拗ねるよ?」

 その笑顔は、無垢で、でもどこか“地雷の香り”が漂っていた。
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