同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

第三六六話 「転校生は“初恋の記憶”──ヒロイン警戒モード突入」

　──朝。登校途中。

　俺の隣を歩く少女が、ふわりと笑った。

「弘弥お兄ちゃん。……今日から、よろしくね？」

「うん……うん！？！？ え、ちょっと待って、やっぱ俺の記憶、合ってたの！？！？」

「今さら！？ もう屋上で会ってるし、名乗ってるし！」

「あ、いや……でも、まさか“みつきの妹”まで兼ねてるとは思ってなくて！」

「うふふ、姉妹って、意外と顔似てないからねー。あと性格も」

（めっちゃ似てない……ていうか、こっちは完全に地雷系の空気まとってる！）

　◆　◆　◆

　──教室、HR直前。

「じゃあ自己紹介してもらおうか、新しいお友達♪」
　担任の水城先生の促しで、彼女は前に出た。

「えっと、篠宮あゆむです。お姉ちゃんの都合で引っ越してきました。
　弘弥お兄ちゃんとは、小さいころ海で結婚の約束をした仲です♡」

　＼　ざわっ……　／

「……はい？」

「お兄ちゃん……？」

「結婚……の約束……？」

　◆　◆　◆

　着席と同時に、ヒロイン全員が一斉にこちらを凝視していた。

　すみれ→沈黙の圧
　ルナ→「……お兄ちゃんって何！？」とガン見
　碧純→すでにペンがへし折れそう
　ひより→「緊急観察対象A-23に認定」
　りあ→「……この女、消すべきかも」
　ことね→微笑んでるが目が笑ってない

「あ、あの……クラスメイトなんで仲良くしてやってくださ……」

「“してやって”って何目線！？」

　◆　◆　◆

　──昼休み。裏庭の物陰。

「ことね、碧純、すみれ、ひより、ルナ、りあ……全員集合。議題は“新転校生について”」

「議長は私。呼び出しは碧純の手紙。強制」

「“弘弥お兄ちゃん”発言について詳しく検証を行います」

「まず第一に、初対面で“お兄ちゃん”呼びって、どう考えても怪しすぎる！」

「それな！？私ですら“弘弥”呼びなのに！？」

「“海辺で結婚の約束”って何！？ 弘弥くん、小学生のときどんだけ罪深かったの！？」

「夢精記録より罪重いわよ……」

「いやそれと比べるのやめて！？！？」

　◆　◆　◆

「というわけで、ここに“対あゆむ防衛作戦本部”を発足します！」

「第一目標：弘弥の“お兄ちゃん”呼びを制限する！」

「第二目標：登下校の同行を遮断！」

「第三目標：“結婚の約束”の証拠を奪取！」

「第四目標：夢精頻度の比較……」

「いやもうやめてほんと！！！」

　かくして、
　新たなヒロインの登場により――

　俺の生活は、さらに地雷だらけの戦場と化した。