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第三六八話 「VS中二病、開戦──“あゆむ様”へのくすぐり魔法発動!」
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──この物語は、観察者・一ノ瀬ひよりの記録から始まる。
『観察対象A-23──“篠宮あゆむ”』
『特記事項:登場初日に“弘弥お兄ちゃん”呼び。
転校理由・本心・精神状態、いずれも不明瞭。
笑顔率高め。だが、瞳の奥に映る光に“ノイズ”を検出。』
「要警戒……かもしれない」
そして彼女は、静かに魔法陣を描き始めた。
◆ ◆ ◆
放課後、図書室の隅。
あゆむは、何やら楽しげに本棚の分類カードを眺めていた。
そこへ、ひよりが“偶然を装って”接近する。
「こんにちは。あゆむさん……少し、実験してもいい?」
「え? 実験?」
「正確には、“観察”です。あなたの反応を、科学的かつ魔術的に記録します」
「……うん、なんだかよく分かんないけど、面白そうだねっ」
にこりと笑うあゆむ。
その無邪気な笑顔が、“防御力ゼロ”に見えた。
(この子……魔法のテストには最適……!)
◆ ◆ ◆
ひよりは、静かに詠唱を始める。
「隠れし森のいたずら妖精よ、我が呼びかけに応えなさい。
風に紛れた微かな笑みを放ち、標的の平穏を乱せ。
見えざる指先で皮膚を撫で、抑えきれぬ感覚を呼び起こせ。
下界の秘所にざわめきを与え、逃れられぬ試練を刻みなさい――
くすくすと響く呪いの調べ……スクラッチ・トリック!!」
ふわっ……
図書室の空気が一瞬だけ揺れ、風もないのにあゆむの髪がわずかに踊る。
「ふ、ふふ……っ」
「……?」
「ふふっ……あ、やっ、あははははっ……えっ、くすぐ……ちょ、どこ!? どこから!?!?」
「効いた……っ!」
◆ ◆ ◆
「お腹!? 脇!? ひざ裏!? あははっ、なにこれ~~~っ!」
あゆむは椅子の上でバタバタと身をよじらせながら、
無防備に笑い転げる。
(完全勝利──!)
と思った、そのとき。
「ひよりさん」
「……はい?」
あゆむが、ぴたりと動きを止めた。
笑顔はそのままなのに――その声だけが、不自然に静かだった。
「さっき、“観察記録”って言ってましたよね?」
「ええ。“あなたの本質”に迫るためのデータです」
「へぇ……じゃあ、その記録……“わたしが全部消してあげたら”どうします?」
「……っ!」
(背筋が……凍った)
笑い転げていたはずの少女は、
一転して“どこか別の人間”のような目をしていた。
「冗談、ですよぉ~♡」
そう言って微笑む彼女の手の中には、
ひよりの観察ノートが、いつの間にか抜き取られていた。
◆ ◆ ◆
(やばい。この子、“ただの地雷”じゃない)
観察者・ひよりの第六感が、警報を鳴らしていた。
これは戦争だ。しかも、“魔術”では勝てないかもしれない
『観察対象A-23──“篠宮あゆむ”』
『特記事項:登場初日に“弘弥お兄ちゃん”呼び。
転校理由・本心・精神状態、いずれも不明瞭。
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「要警戒……かもしれない」
そして彼女は、静かに魔法陣を描き始めた。
◆ ◆ ◆
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「え? 実験?」
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「……うん、なんだかよく分かんないけど、面白そうだねっ」
にこりと笑うあゆむ。
その無邪気な笑顔が、“防御力ゼロ”に見えた。
(この子……魔法のテストには最適……!)
◆ ◆ ◆
ひよりは、静かに詠唱を始める。
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風に紛れた微かな笑みを放ち、標的の平穏を乱せ。
見えざる指先で皮膚を撫で、抑えきれぬ感覚を呼び起こせ。
下界の秘所にざわめきを与え、逃れられぬ試練を刻みなさい――
くすくすと響く呪いの調べ……スクラッチ・トリック!!」
ふわっ……
図書室の空気が一瞬だけ揺れ、風もないのにあゆむの髪がわずかに踊る。
「ふ、ふふ……っ」
「……?」
「ふふっ……あ、やっ、あははははっ……えっ、くすぐ……ちょ、どこ!? どこから!?!?」
「効いた……っ!」
◆ ◆ ◆
「お腹!? 脇!? ひざ裏!? あははっ、なにこれ~~~っ!」
あゆむは椅子の上でバタバタと身をよじらせながら、
無防備に笑い転げる。
(完全勝利──!)
と思った、そのとき。
「ひよりさん」
「……はい?」
あゆむが、ぴたりと動きを止めた。
笑顔はそのままなのに――その声だけが、不自然に静かだった。
「さっき、“観察記録”って言ってましたよね?」
「ええ。“あなたの本質”に迫るためのデータです」
「へぇ……じゃあ、その記録……“わたしが全部消してあげたら”どうします?」
「……っ!」
(背筋が……凍った)
笑い転げていたはずの少女は、
一転して“どこか別の人間”のような目をしていた。
「冗談、ですよぉ~♡」
そう言って微笑む彼女の手の中には、
ひよりの観察ノートが、いつの間にか抜き取られていた。
◆ ◆ ◆
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観察者・ひよりの第六感が、警報を鳴らしていた。
これは戦争だ。しかも、“魔術”では勝てないかもしれない
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