同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四〇四話 「こんにちは、童貞先生♡──漫画家は超絶美人なお姉さん」

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 ──まさか、こんな日が来るとは思っていなかった。

 俺の物語が漫画になる。
 しかも、その担当漫画家は──

「はじめまして、“夢精”原作の先生さん?」

 開口一番から言葉の攻めが強い。
 まるで濃厚な香水のような空気が、編集室に広がった。

 ◆ ◆ ◆

 神名寺いおり先生。

 知っている。
 知らなかったわけがない。

 ──SNSフォロワー90万超。
 ──代表作は『濡れるページは恋の予感』や『失禁オフィスラブ』など、青年誌で“艶”の限界を突き抜ける作品群。

 表紙ではいつも、“体のどこかが濡れている”。

 そんな人が、よりによって……!

「夢精の少年を、描きたいの」
 目を細めて、俺の全身を舐めるように見ながら言った。

「童貞でしょ? 香ってるのよ……甘くて、不安定で……ちょっとしたきっかけで崩れそうな、あのにおい」

「いやいやいやいや!! 匂いで童貞ってバレるの怖すぎますからね!?」

 ◆ ◆ ◆

 美月が、コーヒーを飲みながら小声で言った。

「……この人、弘弥くんのこと気に入ったわね、間違いなく」

「どの辺で判断してんの!?」

「“童貞臭”って単語が出た時点でアウトでしょ。あれ、狩る側の目してたもの」

 いおり先生は、スーツの襟を整えながら真顔で言った。

「私はね、性は愛の入り口だと思ってるの」

「開幕からスゴい話来たな」

「夢精って素敵よ。“誰かを思って眠る夜”って、想像力の結晶じゃない」

「そんな言葉でロマンティックに包んでも、中身はパンツ濡れてるだけですからね!?」

 ◆ ◆ ◆

「ねぇ、原作の先生」

「は、はいっ……!」

「あなたが初めてなの。
 “作品の中の少年”を、愛と視線で舐めるように描くの」

「もういっそR-18でいきましょうよぉぉおおお!!!」

「でもね」
 彼女は、ふと優しい顔になる。

「あなたの作品は、汚くないのよ。
 バカみたいにピュアで、バカみたいに愛があって。
 だから、私が描くわ。“夢精のその先”を」

 ◆ ◆ ◆

 打ち合わせ終了後。

 俺は、玄関先で頭を抱えていた。

(この人が担当で大丈夫なのか……?)

(いや、むしろ俺が耐えられるのか……!?)

 スマホが震えた。

【神名寺いおり先生】
『今度、一緒に資料集めしよ? 夜の布団とか──再現できると、リアルよね♡』

「……地獄のコミカライズ、始まったな」

 ──次回、夢精作家と漫画家の“布団攻防編”突入!?
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