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第四五五話「実物資料?届いたブラジャーたち」
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「……えーっと、これ、マジで?」
真壁弘弥は、編集部の一室で、目の前に広がる光景に戦慄していた。
机の上には、色とりどりの――それも、サイズも形も香りも異なる――ブラジャーたちが整然と並んでいた。
「えーと、こちら“白神ルナ提供、香水付き”……こっちは“水無瀬すみれ提供、柔軟剤の香り重視”……で、これは“黒瀬りあ提供、未洗濯。香りそのまま”……」
「未洗濯!?」
思わず手を引っ込める。
「なにこれ!?なんの試練!?」
横にいた担当編集の美月が、青ざめた顔で問いかけてきた。
「……これ、資料ってことで……いいのよね?ね? 弘弥先生?」
「資料なわけあるかああああ!!」
弘弥が机を挟んで全力否定した瞬間、どこからか紙袋が追加で届いた。
『睦月より 黒 シンプル 勝負用』
『小春より クマさん柄 ふわふわ仕様 洗い立て』
『如月より 未記名(封筒に“殿下へ”とだけ書かれている)』
「いや、勝負ってなんだ……なにと戦ってるの睦月!?」
「ていうか殿下宛てって誰だよ、くノ一か!? お前ら本当にくノ一だったのか!?」
もはや、机の上は“女性用下着展示会”状態である。
「弘弥先生……ぶっちゃけ、どれが一番、来ます?」
美月が、恐る恐る聞いた。
「俺にその問いを投げるなあああ!」
思わず天を仰ぎ、叫ぶ。
が、弘弥は心の中でこう呟いていた。
(俺は今、ブラの海に……溺れている)
編集部の裏事情
――なぜ、こんなことになったのか?
発端は、あの“支え愛論”のバズだった。
「ブラは恋と同じ。包み込み、支え、整えるもの」
その一文がSNSで爆発的に拡散され、さらにはメインヒロインの原型が誰か、という“モデル論争”まで起こる始末。
その中で、ヒロインたちがそれぞれの“実物資料”を提供し始めたのだった。
「私のがモデルだって証明したいの」
「彼の原点は私よ」
「見て、わたしの“ふわふわ”……」
思い思いの想いが、布とレースに込められ、編集部に送りつけられたのだ。
そして。
「これ、もし洗濯してないものが混じってたら、ヤバくない?」
「ていうか、香り嗅いで比較しようとしてるの誰よ!? りあちゃんでしょ絶対!!」
美月が混乱する横で、弘弥はすでに魂がどこかへ飛んでいた。
静寂の中の一言
「……弘弥先生?」
編集者・美月が、ためらいがちに聞く。
「はい……?」
「これ、本当に“資料”ですよね……?」
「うん……うん、資料……たぶん……」
「たぶん、って何!?!?」
バンッ!
思わず机を叩いた美月の手が、ブラの山を軽く崩す。
その瞬間、ひときわ目立つレースと刺繍の一着が、ふわりと宙に舞った。
「うおっ、これは……!!」
思わずキャッチしたその一着。
――淡いピンクに、微かに薔薇の香りが残る、少女らしい優しさと、微妙な艶の共存した逸品。
「……こ、これは、誰の……」
「それ、私の」
不意に、背後から声がした。
振り返ると、そこには碧純がいた。
「……見たなら、責任、取ってね」
にっこりと微笑むその顔には、怒気も照れも、愛情も、全部が混ざっていた。
「な、なんの責任!?」
「“ときめき”の、その先よ……」
真壁弘弥は、編集部の一室で、目の前に広がる光景に戦慄していた。
机の上には、色とりどりの――それも、サイズも形も香りも異なる――ブラジャーたちが整然と並んでいた。
「えーと、こちら“白神ルナ提供、香水付き”……こっちは“水無瀬すみれ提供、柔軟剤の香り重視”……で、これは“黒瀬りあ提供、未洗濯。香りそのまま”……」
「未洗濯!?」
思わず手を引っ込める。
「なにこれ!?なんの試練!?」
横にいた担当編集の美月が、青ざめた顔で問いかけてきた。
「……これ、資料ってことで……いいのよね?ね? 弘弥先生?」
「資料なわけあるかああああ!!」
弘弥が机を挟んで全力否定した瞬間、どこからか紙袋が追加で届いた。
『睦月より 黒 シンプル 勝負用』
『小春より クマさん柄 ふわふわ仕様 洗い立て』
『如月より 未記名(封筒に“殿下へ”とだけ書かれている)』
「いや、勝負ってなんだ……なにと戦ってるの睦月!?」
「ていうか殿下宛てって誰だよ、くノ一か!? お前ら本当にくノ一だったのか!?」
もはや、机の上は“女性用下着展示会”状態である。
「弘弥先生……ぶっちゃけ、どれが一番、来ます?」
美月が、恐る恐る聞いた。
「俺にその問いを投げるなあああ!」
思わず天を仰ぎ、叫ぶ。
が、弘弥は心の中でこう呟いていた。
(俺は今、ブラの海に……溺れている)
編集部の裏事情
――なぜ、こんなことになったのか?
発端は、あの“支え愛論”のバズだった。
「ブラは恋と同じ。包み込み、支え、整えるもの」
その一文がSNSで爆発的に拡散され、さらにはメインヒロインの原型が誰か、という“モデル論争”まで起こる始末。
その中で、ヒロインたちがそれぞれの“実物資料”を提供し始めたのだった。
「私のがモデルだって証明したいの」
「彼の原点は私よ」
「見て、わたしの“ふわふわ”……」
思い思いの想いが、布とレースに込められ、編集部に送りつけられたのだ。
そして。
「これ、もし洗濯してないものが混じってたら、ヤバくない?」
「ていうか、香り嗅いで比較しようとしてるの誰よ!? りあちゃんでしょ絶対!!」
美月が混乱する横で、弘弥はすでに魂がどこかへ飛んでいた。
静寂の中の一言
「……弘弥先生?」
編集者・美月が、ためらいがちに聞く。
「はい……?」
「これ、本当に“資料”ですよね……?」
「うん……うん、資料……たぶん……」
「たぶん、って何!?!?」
バンッ!
思わず机を叩いた美月の手が、ブラの山を軽く崩す。
その瞬間、ひときわ目立つレースと刺繍の一着が、ふわりと宙に舞った。
「うおっ、これは……!!」
思わずキャッチしたその一着。
――淡いピンクに、微かに薔薇の香りが残る、少女らしい優しさと、微妙な艶の共存した逸品。
「……こ、これは、誰の……」
「それ、私の」
不意に、背後から声がした。
振り返ると、そこには碧純がいた。
「……見たなら、責任、取ってね」
にっこりと微笑むその顔には、怒気も照れも、愛情も、全部が混ざっていた。
「な、なんの責任!?」
「“ときめき”の、その先よ……」
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