同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四五六話『文学は変態の果てにある──講演会、大混乱』

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 高校の講堂。

 今日は外部講師を招いての「文学講演会」が開催されるということで、全校生徒が集められていた。

 壇上には、どこか知的な雰囲気をまとった中年の小説家。そして――

「えっ、な、なんで俺が壇上に!?」

 俺はその壇上の片隅に、“参考作家枠”として座らされていた。

 理由は簡単だ。

 担任の中島先生が――

「この中に、いま実際に文芸誌で連載を持っている、我が校が誇る若き文豪がいるのだ!」

 などと、俺の正体をほぼバラす形で壇上に引っ張り上げたからである。

「ま、真壁先輩って……あの“夢精ラブコメ”の作者じゃないですか!?」 「やば、私あの小説、親の前で読んでた……!!」

 女子のざわめきが凄い。 男子は笑いながら親指を立ててくる。

 ……逃げたい。

 だが、地獄はこれからだった。

 

 

「それでは真壁くん、次の質問に答えてもらえますか?」

 壇上の司会者に促され、俺は咳払い一つ。

「“性”というテーマについて、どう思われますか?」

 ……は?

 おいちょっと待て、俺まだ高校生だぞ!?

 しかし会場は沈黙に包まれている。逃げられない。

「え、えっと……その、文学における“性”とは、恥ではなく……生(せい)の表現だと思います」

「あっ、うまいこと言った!」 「うまくねぇよ!!」

 すかさず突っ込んでくれたのは……前列に座っていたヒロインズだった。

 すみれがこめかみに手を当てている。ひよりはなぜか記録ノートを構えている。 ルナは爆笑中。 そして碧純は……机に突っ伏して「もうヤダこの人」って顔していた。

 ……すまん。

 だが、このあとが本番だった。

 

 

 講演も終盤。

「ここで、真壁くんの作品に関連する“創作資料”を一部展示しています」

 そう言って壇上に並べられたのは、――ヒロイン提供によるブラジャーたち。

 それも、「資料」という名目で編集部に送られてきたものらしく、

 ・千夏の「洗濯済(本人直筆メモ付き)」
 ・ルナの「香水あり未使用(※未開封ではない)」
 ・すみれの「私にはこれは……必要ですか?という一文添え」
 ・ことねの「中二病テイスト仕上げ・黒レース地」
 ・碧純の「無言で封筒に入れられていた」

 と、狂気のバリエーション。

 そして最後に。

「こちら、真壁くんが“文学的ときめき”を覚えたという“最初のブラ”の再現品になります」

 壇上に掲げられたのは――白地にレースがあしらわれた、どこかノスタルジックな一品。

 会場の空気が、一気に“変態”の域に突入したのを感じた。

 俺は震えるマイクを握りしめ、こう締めくくった。

「……愛とは、包み込み、支えるものだと、思います」

 ※誰もブラジャーの話だとは言ってないが、全員そう解釈した。

 拍手が、どこからともなく沸き起こった。 女子たちの間からは「……逆にアリかも」みたいな謎の同調が生まれていた。

 校長は、静かに目を逸らしていた。

 

 

 放課後。

「で、これは一体どういうつもりだったんでしょうか、真壁くん」

 生活指導室。

 俺の正面には中島先生。横には副校長。

「いや俺も、まさか壇上にブラ並べられるとは思わなかったんですよ!?誓って演出じゃないんです!!」

「……そういう作風なのかもな、とか思い始めてる自分が怖いです」

 副校長がなにか遠い目をしている。

 その日、俺は“文学的ブラジャー事件”の張本人として、謎の書類に署名させられた。

「これは……なに?」 「“創作展示における素材選定ガイドライン”だ」

 こんな書類、高校にあるか!?

 

 

 帰宅後。

 玄関を開けた瞬間、ヒロインズが一斉に正座して並んでいた。

「さあ、弘弥。“最初のブラ”の犯人を今ここで決めなさい」

「ええっ!?」

「誰のだったの? 一番ドキドキしたのは、誰のブラだったの?」
「香水の匂いで選んでもいいわよ」
「参考資料、これよ!」(と取り出すルナ)
「私、ちゃんと正面から“包んだ”と思うけど……」とすみれ。
「その……全部洗濯してから返して……」と碧純。

 俺は、その光景を見て――思った。

 “ブラジャー編”、まだまだ終わりそうにない。
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