同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四八五話『旅立ち、そして速攻バレた地雷』

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 東京駅、東北新幹線ホーム。

 俺たちは、わいわいと騒ぎながら鳴子温泉行きの新幹線に乗り込んだ。

 事前に取った席は、見事に全員並び席。

 当然、俺の静かに読書プランは、スタート地点から破綻していた。

 新幹線が滑るように発車するや否や──

「はいっ! 旅行といえばお菓子ターイム!!」

 ルナがリュックからポテトチップスやチョコレート、グミにクッキーを大量に取り出した。

「うわ、ちょっとルナ、それ量おかしいから!」

 碧純がツッコミを入れるが、ルナは満面の笑みで答える。

「大丈夫大丈夫! 動かない時間が長いから、糖分補給しなきゃ!」

「いや、問題そこじゃない……」

 俺が呆れている間にも、車内に漂うスナック臭。

 さらに──

「ねー、お兄、お菓子どれがいい? チョコ? それとも、この超酸っぱいやつ?」

 碧純が俺にお菓子を押し付けてくる。

「いや、俺は別に……」

 断ろうとした瞬間、ルナが「じゃあこれな!」と勝手に袋を俺の膝に置いた。

 酸っぱいグミだった。

 そんな中──

「弘弥くん、静かに本読んでるの? 真面目~」

 すみれが微笑みながら話しかけてくる。

「別に……静かに移動したかっただけだよ……」

 俺は小声で返したが、その声はお菓子パーティーの喧騒にかき消された。

 その隣では、ひよりがタブレットを開いて温泉地情報を読み上げ始める。

「なお、鳴子温泉郷は泉質が異なる五つの地域から成り立ち……」

 情報過多だ!!

 一方で、ことねは座席に正座して目を閉じ、

「黄金の湯、魂の浄化、運命の交錯……」

 謎の祈祷を始めていた。

 なんだこのカオス空間は。

 俺の静かな癒し旅は、早くも木っ端微塵だった。

「なぁ、ちょっと静かに──」

 そう言いかけた俺に、ルナがポテチを差し出してきた。

「ほら弘弥も食べよ! 元気出るから!」

 その明るい笑顔を見たら、文句を言う気も失せた。

 結局、俺もポテチを受け取って、ぽりぽり食べる羽目になった。

 新幹線は、窓の外に広がる春の田園風景を横目に、東北へとひた走る。

 が、俺の精神力は早くも削られ始めていた。

 そして事件は起きる。

 座席ポケットから、碧純が俺の旅館予約票を引っ張り出してしまったのだ。

「ねぇ、これって……一部屋しか取ってなくない?」

「え?」

 俺が凍りつく。

 その場に、爆弾が落ちた。

「なにそれ!? 弘弥、お兄と密着旅行!?」

 ルナが嬉しそうに叫び、

「……ふむ、つまり部屋割り問題、発生」
 ひよりが冷静に分析し、

「黄金の夜……運命の交錯……」
 ことねがさらに謎なことを呟く。

 すみれはため息をつきながらも、

「まあ、弘弥くんと一緒でも、悪くないけどね」

 と微笑む始末。

「ち、ちがう! 元々一人旅予定だったから! 一人用のプランしか取ってなくて!!」

 必死で弁明する俺。

 だが、時すでに遅し。

「じゃあ、全員で雑魚寝だねっ☆」

 ルナがニッコリ笑った。

 いや、待て、ちょっと待て。

 雑魚寝って、何だ。
 そんな甘い響きで誤魔化されるけど、これ絶対ろくでもない未来しかないだろ!!

 ──こうして、

 旅先に到着する前から、俺の癒し旅は完全に崩壊したのだった。

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