同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四八七話『温泉卓球は恋のバトル!』

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 貸切風呂のドタバタをなんとか乗り越えた俺たちは、夕食までの空き時間を使って、旅館の館内施設を散策することになった。

 そこは、古いながらも温かみのある空間で、壁に掛けられた絵画や、木製の家具たちが旅情を誘っていた。

 その一角──

「お、卓球台あるじゃん!」

 ルナが真っ先に駆け寄った。

 旅館といえば温泉卓球。
 定番中の定番だ。

「やろうやろう! 卓球!」

「いいわね、運動不足解消に」

 すみれが微笑み、

「……観察対象の運動能力、測定に最適」
 ひよりが不穏なことを言いながらメモを取り出す。

「弘弥様とペア……」
 ミレーヌは耳まで真っ赤にしながら呟き、

「兄の勝利、私が支える!」
 碧純は気合い満点でラケットを握り締めた。

 そして──

「じゃあさぁ! 弘弥とペアになりたい子、卓球トーナメントで勝負しようぜ!」

 ルナがまたしても爆弾発言をかました。

 案の定──

「参加します!」
「もちろん出る!」
「我も参戦!」

 一瞬でヒロインズ全員、やる気満々モードに突入した。

「……えっと、俺は……?」

「弘弥は審判!」

 ルナにあっさり役割を押し付けられる。

 まあいい。
 とにかく静かに見守ろう──そう決意した、ほんの数秒後だった。

 ──俺は、人生最大級の集中力を要求される事態に直面していた。

 なぜなら。

「えいっ!」
 ルナが汗ばんだTシャツをぴたっと体に貼り付かせながらスマッシュを打ち、

「そりゃっ!」
 碧純がミニスカ浴衣の裾をひらひらさせながらラリーを続け、

「ふっ」
 すみれが軽やかに振り抜くたび、浴衣の合わせが微妙に開きそうになり、

「やあっ」
 ミレーヌがふわりと跳ねるたび、絶対領域が惜しげもなく晒され、

「……観察対象、危険領域突入」
 ひよりが無表情で記録を取りながら、なぜかスカートを押さえていた。

 つまり。

 胸元チラチラ、太ももチラチラ、汗ばんだ素肌チラチラ──

 四方八方から、男子高校生の理性を破壊しにかかっていたのだ。

(見たら負けだ……!!)

 俺は必死で視線を泳がせ、天井を見たり、壁を見たりして誤魔化した。

 だが──

「弘弥、ちゃんと試合見て! 判定お願い!」

 ルナに怒られ、

「兄の審判、私信じてるから!」
 碧純に熱い視線を送られ、

 結局、試合を見ざるを得ない地獄に突き落とされた。

 目のやり場に困りながらも、白熱するラリー。

 みんな、意外と卓球が上手い。

 特にルナと碧純の運動神経は抜群で、スマッシュとカットの応酬が続く。

「うりゃあああっ!」

 ルナが全力スマッシュを放ち、

「とりゃあああっ!」

 碧純がギリギリで拾う。

 ボールはネット際で跳ね、奇跡的に相手コートへ返った。

 ──そして、

「やったああああっ!!」

 碧純が勝利を決めた。

 その瞬間、館内に大歓声が響いた。

「兄と夜の湯上がり牛乳タイム、ゲットォォォ!!」

 碧純が両手を挙げて勝利宣言する。

「マジか~、やられた~」

 ルナが悔しそうに頭をかく。

「……黄金の夜に、祝福を」

 ことねが何か言っていたが、誰も気にしなかった。

「弘弥様……悔しいです……」

 ミレーヌがしゅんとうなだれる。

「まあまあ、次のチャンスに頑張ろうな」

 俺は苦笑しながら声をかけた。

 こうして、

 **『弘弥と湯上がり牛乳タイム権』**は、碧純の手に渡ったのだった。

 ──問題は、この後である。
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