同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第五〇一話『宣戦布告──ヒロインズ、正妻会議を開く』

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 静かな夕暮れだった。

 ──ただし、俺以外の空間は。

 リビング。

 そこに集ったヒロインたち。

 鬼咲ルナ。
 真壁碧純。
 水無瀬すみれ。
 一ノ瀬ひより。
 黒瀬りあ。
 エレノア・暁・フェリシア・ル・エーデルワイス・リィ。
 ことね。
 ミレーヌ・オルディア。
 結咲紗凪。

 錚々たる顔ぶれだった。

 全員、並んで座っている。

 テーブルには、何故か議事録用のノートまで置かれていた。

 そして──

「本日の議題は!」

 ルナが、ドン! とテーブルを叩く。

「弘弥の、正妻を決めること!!」

 リビングに、雷鳴のような宣言が響き渡った。

「…………」

 俺は、

 呆然とした。

 な、何を言ってるんだこの人たちは。

 いや、正確には、

 何をしようとしているんだこの人たちは!!

「まず、ルールを説明する!」

 ルナが続ける。

「フェアにいくために、それぞれ『なぜ自分が弘弥の正妻にふさわしいか』をプレゼンする!」

「……異議なし」
 碧純が即答した。

「妥当な提案ですね」
 すみれが眼鏡を押し上げた。

「公平性、確保」
 ひよりが無表情で頷いた。

「黄金の刻、ここに始まる──」
 ことねが謎呪文を唱えた。

「賛成でございます!」
 ミレーヌが拳を握った。

「わたくしも、異論はありませんわ」
 エレノアが優雅に微笑んだ。

「……まあ、いいんじゃないの」
 最後に紗凪が、小さく呟いた。

 全会一致だった。

「──では、プレゼンスタート!!」

 ルナが、号令をかけた。

 俺は、

 呆然としたまま、

 彼女たちのプレゼンを聞く羽目になった。

 トップバッターは、ルナだった。

「私、ルナは!! 弘弥の一番の理解者!!!」

 拳を突き上げながら叫ぶ。

「一緒にバカやって、一緒に笑って、一緒に怒って!! 弘弥となら、絶対、楽しい家庭が作れる!!」

 ……うん。
 元気だけは、誰にも負けない。

 続いて、碧純。

「わ、私は……兄のこと、子供の頃からずっと見てきた!」

 顔を真っ赤にしながら、手元のメモを必死に読む。

「家事もできるし、仕事のサポートもできる! 兄が疲れたら、絶対、癒してみせる!!」

 妹らしい、堅実なアピールだった。

 すみれが、静かに立ち上がる。

「私、水無瀬すみれは──弘弥くんの才能を、誰よりも信じています」

 落ち着いた口調。

「彼が何を選んでも、どんな未来を歩んでも、支える覚悟があります」

 深みのある言葉だった。

 ひよりが、ぺたりと座ったまま、メモを広げる。

「データに基づき、私が最適正妻候補」

 それだけ言って、観察ノートをめくる。

 ……具体的なエビデンスは不明だった。

 ことねが、すっと立ち上がる。

「我、運命により導かれし者なり」

「弘弥様との絆、星々に刻まれり」

 意味は分からなかった。

 でも、熱意だけは伝わった。

 ミレーヌが、顔を真っ赤にして手を挙げた。

「わ、わたくし、ミレーヌ・オルディアは……! 弘弥様のために、日本まで来ました!!」

 必死の訴えだった。

 エレノアが、優雅に微笑む。

「わたくし、エレノア・暁・フェリシア・ル・エーデルワイス・リィは、弘弥様と共に、未来を築く覚悟がございます」

「そして──わたくしの国では、一夫多妻制も認められております」

 さらっと爆弾発言を落としていった。

 最後に、紗凪。

 彼女は、立ち上がりもしなかった。

 ただ、ソファに座ったまま、
 ぼそりと、呟いた。

「……ずっと、好きだったから」

 その言葉に、

 リビングが、

 静まり返った。

 俺は、

 顔を両手で覆った。

 無理だ。

 こんなの、

 耐えられるわけがない。

(……俺、どうすればいいんだ)

 正妻戦争──

 いよいよ、

 正式に、

 幕が上がった。

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