同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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【第五三一話】 『再会──エレノア、国際会議をサボる』

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 その日、家の前に異様な光景が広がった。

「……なんだあれ。」

 弘弥は呆然と立ち尽くした。

 家の前の細い道路に、
 場違いすぎる黒塗りのリムジンが停まっていた。

 ドアが開く。
 まず、屈強なスーツ姿の護衛たちが数名降り立ち、
 最後に──

「ごきげんよう、真壁弘弥様!」

 ──金色の髪が、朝日を受けて煌めいた。

 エレノア・暁・フェリシア・ル・エーデルワイス・リィ。
 あの、異国の姫が、久しぶりに目の前に立っていた。

 真っ白なワンピース、
 完璧な笑み、
 気品と無邪気さを併せ持った、美しい少女。

「え、エレノア……!? 国際会議は!?」

 弘弥が思わず叫ぶ。

「抜け出してきました!」

 満面の笑顔で即答だった。

「いや駄目だろおおおおお!!!」

 ◆

 リビングに通したエレノアは、
 まるで観光気分のようにきょろきょろと辺りを見回した。

「やはり……ぬか床の育つお部屋は、特別な空気ですね!」

「そんな神聖視しないで!!!」

「だって……感動しましたもの!」

 エレノアは、キラキラと瞳を輝かせながら、
 ぎゅっと弘弥の手を握った。

「先生の『きみと、ぬか床と、永遠と。』──わたくし、三度読みました!」

「三度も!?」

「はい! そして、わたくし、閃いたのです!」

 ずいっと顔を近づけてくる。

「──美少女たちが素足で踏み絞った葡萄で作るワイン、素敵だと思いませんか?」

「……っ!」

 弘弥の脳裏に、嫌でも鮮烈なイメージが浮かんだ。

 素足で、葡萄を、踏みしめる──
 照れ笑いを浮かべる少女たち──
 ぶどうジュースに濡れる白い肌──

「興味……あります。」
 思わず、絞り出すように答えていた。

 ◆

 だがすぐに、現実に引き戻される。

「でも、俺、まだ未成年だし……お酒は……」

 するとエレノアは、さらなる爆弾を投下した。

「では、今から仕込みましょう!」

「え?」

「葡萄を踏み絞って、ワインを作り──数年かけて熟成させるのです!」

「──成人した暁に、皆様で祝杯をあげるのですよ!」

「!!!」

 弘弥は、
 まるで未来の約束を手渡されたような気持ちになった。

(成人したら……みんなで、ワインで乾杯する。)

 そんな未来が、
 ひどく眩しく思えた。

 ◆

 そこへ──

「兄ー! なんか騒がしいけど──って、ええええええ!!?」

 碧純たちヒロインズも、リビングに駆けつけてきた。

「エレノア!? 国帰ってたんじゃなかったの!?」

「また勝手に来たのかよ!!」
 ルナが叫ぶ。

「外交問題になりませんように……」
 すみれが青ざめる。

「……異国からの刺客、確認。」
 ひよりがノートに記録を始めた。

「ぬ、ぬか床の次は……葡萄踏み……!?」
 ミレーヌは動揺でぷるぷる震えていた。

「……兄がまた変なことに巻き込まれそう。」
 紗凪がため息をつく。

 ◆

「というわけで!」

 エレノアはにっこりと笑い、
 皆に向かって手を差し伸べた。

「皆様! わたくしの国へ、ぜひいらしてください!」

「伝統の葡萄畑で、青春のワインを仕込みましょう!」

 ヒロインたち、顔を見合わせる。

 そして──

「「行くしかないか……」」

 腹を括ったように頷いた。

 ◆

 こうして──

 真壁弘弥とその仲間たちは、
 青春と発酵を求めて、異国の地へ旅立つことになった。

 目指すは、
 金色の葡萄畑と、
 素足で踏みしめる、
 まだ見ぬ未来──!
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