同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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【第五三三話】 『ワイン作り、開始──まずは素足で』

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「では、これより伝統儀式──葡萄踏みを始めます!」

 エレノアの宣言に、あたりが静まり返った。

 場所は、王族直営の葡萄農園に併設された、巨大な石造りのワイン工房。
 太陽の光が差し込む中、床に並んだ大きな木製タンクに、
 収穫されたばかりの葡萄がたっぷり詰め込まれていた。

 紫色に輝く葡萄の海。
 甘く、少し発酵しかけた匂いが漂う。

「……これを、素足で踏むんだよな……?」

 弘弥は、乾いた声で呟いた。

「はい! 王国伝統のワイン作りでは、必ず素足を使うのです!」

 エレノアが胸を張る。

「素足には、適度な力加減と、絶妙な圧力分散効果があるのです!」 「さらに……わたくしたちの常在菌が、葡萄に微細な変化を与え、世界に二つとないワインを生み出すのです!」

 なぜか誇らしげに語られる"常在菌"。

 弘弥は、
 もはや一周回って感動しかけていた。

(美少女たちの……常在菌による……奇跡の発酵……!)

 ◆

「それでは皆様、靴と靴下を脱いで、準備を!」

 エレノアの号令で、
 ヒロインたちはそれぞれ、モジモジしながら足元に手を伸ばした。

「恥ずかしいけど……しょうがないかぁ。」
 ルナが笑いながらスニーカーを脱ぐ。

「兄の前で、裸足なんて……っ、っ、ばかぁ……!」
 碧純は顔を真っ赤にしながら、靴下を脱いだ。

「……兄、変な目で見るなよ。」
 紗凪が鋭い目線を投げる。

 すみれは、無言でブーツを脱ぎ、白く整った足指を晒した。
 ひよりも無表情のまま、ストッキングを脱ぎ捨てる。

 ミレーヌは小さく「きゃっ」と声を上げながら、裸足になった。
 エレノアは堂々とワンピースの裾を持ち上げ、優雅に靴を脱いだ。

 ◆

 ずらりと並ぶ──

 素足、素足、素足、素足──

 葡萄タンクの前に、
 美少女たちの裸足が勢揃いしていた。

(み、見るな……見るな俺……!!)

 弘弥は、必死に目線を泳がせる。

(でも……見ないとか、無理だろ!!!)

 つややかな爪。
 細くて白い足首。
 少し赤くなったかかと。
 汗でしっとりと光る肌。

(ぐあああああああああ!!!)

 頭を抱えた。

「兄、鼻血出そうになってる。」
 碧純が冷たく指摘する。

「ばかっ!見るなぁぁぁぁぁ!!」
 弘弥は絶叫した。

 ◆

「それでは、いざ、タンクへ!」

 エレノアが楽しげに号令をかける。

 ヒロインたちは、それぞれ覚悟を決め、
 タンクの中に、片足を、そっと沈めた。

「ひゃっ……!?」

「冷たっ……!」

「にゅるって……」

「うわ、思った以上にぐにゅぐにゅしてるぅ……!」

 次々と飛び交う悲鳴と笑い声。

 葡萄の皮を潰す、柔らかくて、ぬるっとした感触。
 指の間を葡萄汁が伝い、素足全体を包み込む。

「きゃあああ、これ、無理かも!!」
 ルナが飛び跳ねる。

「うぅぅぅぅ、兄、助けてぇぇぇ……!」
 碧純も半泣きになってタンクの縁にしがみつく。

「これが……発酵……青春……!」
 ひよりは嬉々としてぐにぐに踏み続ける。

「これで……世界一のワインを……!」
 エレノアは目を輝かせている。

「た、楽しいですの……!」
 ミレーヌも意外なほどテンションが高い。

「……兄、逃げんなよ。」
 紗凪が鋭く睨んできた。

 ◆

 弘弥は、
 そんな光景を目の前にして、
 ただひたすらに思った。

(これ、理性持つの……無理じゃない!?)

 ◆

 タンクの中では──

 葡萄が潰され、
 紫色の果汁が、
 少女たちの足にまとわりつき、
 きらきらと光を弾いていた。

 その光景は、
 どこか神々しく、
 どこか背徳的で──

 ──青春だった。

 ◆

 こうして。
 真壁弘弥とヒロインたちによる、

『美少女素足ワイン作り大作戦』

 ──その第一歩が踏み出された。
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