同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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【第五三四話】 『ぐにゅぐにゅ、きゅっきゅ──青春の足音』

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 葡萄タンクの中、少女たちの悲鳴と笑い声が響き渡った。

「ひゃあっ!」「うわああぬるぬるするううう!」

 素足で葡萄を踏みしめる感触は、想像以上にダイレクトだったらしい。

 ぐにゅっ、きゅっきゅっ──
 足の裏から伝わる、柔らかく弾力のある感覚。
 皮が潰れ、果汁が滲み出し、足の指の間をすり抜けていく。

「うひゃあああああ!!」
 ルナが飛び跳ねる。

「これ絶対、エロいでしょおおおお!!!」

 その叫び声に、場が一瞬静まり返った。

「──ルナァァァァァァァァ!!!!!」

 即座に碧純がルナに突っ込みを入れる。

「黙れ!いや今すぐ黙れ!!!」

「だってこれ!これだよ!?男子だったらみんな絶対妄想するやつじゃん!!」

「……お兄、見ないで……」

 碧純は顔を真っ赤にして、葡萄汁まみれの足を隠すように身をすくめた。

 ◆

「ふふ、青春とは、常に生々しいものですわ。」

 エレノアがどこか達観したように微笑む。

「異文化体験、記録中。」
 ひよりは無表情のまま、なぜか葡萄まみれになりながらノートを取り出そうとする。

「こ、これが……っ、発酵……!」
 ミレーヌも頬を赤らめながら必死に足を動かしていた。

 すみれは比較的落ち着いていたが、
 時折ぐにゅっと潰れる感触にピクッと反応していた。

「ぬるぬるしてるぅ……これ、絶対想像以上だって……」
 ルナは大騒ぎしながら、笑いが止まらない様子だ。

「兄、見たら……殺す。」
 紗凪が冷たく宣言した。

 ◆

「──というわけで、真壁弘弥様!」

 エレノアがにっこりと、絹のような声で言った。

「本日は記録係をお願い致します!」

「は?」

「これだけ貴重な作業、映像と文章でしっかり残しておかなくては!」

「いやいや無理だろ!?」

「合法ですから!!」

「その理屈やめろぉぉぉぉぉ!!!」

 エレノアと護衛たちに脇を抱えられ、
 半ば強制的に撮影ポジションに配置される弘弥。

 目の前には──

 葡萄まみれの素足。
 赤く染まった指先。
 楽しそうに笑う少女たちの横顔。

 ◆

(合法……合法だ……合法……!!)

 心の中で必死に唱える。

(俺は……純粋に、文化記録をしているだけだ……!!)

 カメラを構え、
 震える指でシャッターを切る。

 カシャッ。
 カシャッ。

 ぐにゅぐにゅ、きゅっきゅっ。

 踏み潰される葡萄の音と、
 少女たちの笑い声が、
 耳に染み渡る。

 ◆

「ほら、お兄、ちゃんと撮ってよ!」

 ルナが葡萄汁で濡れた足をわざとぺたんと近づけてきた。

「これ、サービスカットだから!」

「いらないからああああああああ!!!!!」

 必死でシャッターを切りながら、顔を背ける弘弥。

「兄、真っ赤。」
 碧純が呆れたように笑う。

「はは……青春ですね。」
 すみれが微笑む。

「観察対象、限界突破まで残り10分。」
 ひよりが冷静にノートにメモ。

「わ、わたくし、がんばりますの……っ!」
 ミレーヌも必死に踏み続ける。

「……兄、変な妄想すんなよ。」
 紗凪の鋭い眼光が刺さる。

 ◆

 タンクの中では──

 葡萄の海に、素足が沈み、
 時折跳ね、
 笑い、
 転び──

 青春が、
 ぐにゅぐにゅと、
 確かに、発酵していた。

 弘弥は、
 カメラのファインダー越しに、
 その光景を焼き付けながら思った。

(──やっぱり、青春って、バカみたいだけど最高だ。)

 タンクの中で跳ねる少女たちの笑顔が、
 世界で一番眩しかった。

 ◆

 こうして。

 発酵する恋と青春の、
 美少女素足ワイン作りは、
 さらに加速していく──!
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